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幸月 3
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「嫌なことがあったかな……?」
「うー……うああああ!!!」
だが、またここで少年は大きく体を動かした。腕を振り払うように体を左右に勢いよく動かす。そのとき、少年の足元に目がいった。少年の足はぴんっと突っ張り、今にも駆け出さんばかりにつま先を床に押し付けていた。その状態でプルプル震える足を見て、俺は少年を座らせるように力をかけた。
「まず座ろう。その体勢じゃ辛いだろ?」
「ああ!!」
「嫌だよな。座りたくないな……。でも、座ったら、楽になるよ。嫌なことも、ちょっと落ち着くかもしれない」
「うー、うー」
「うん、良い子……」
だんだんと力が弱まってきた少年をぎゅっと抱きしめていると、触れ合う胸の奥から酷く激しい鼓動が聞こえてきた。まるで胸を破って出てきてしまうのではないかというほどのその振動に合わせて、少年は微かに体を揺らした。
「苦しいな、怖いな」
頭を撫でてやりたいのを我慢しながら、俺はそのまま少年の足から力が抜けるのを待った。ずっと動かしていなかった体に突然長時間力を入れたら、ぐったりと体は支えを無くすはず。少年にとっては恐ろしいことだろうが、これもまた人が自分の体を守るためのものだ。
それから少しして、少年は足のつっぱりを緩めてもたれかかれるように力を抜いていった。俺は片手で少年を支え、もう片方の手で少年の膝をマットにつかせて、そのまま座らせた。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ……」
「良い子」
大人しくしている少年にそう声をかける。片手でも抑えられるほど抵抗力の無くなった少年は、先ほどまでの荒々しさから一転、嵐の後の凪いだ海のような静けさをまとっていた。しかし、その瞳から零れる涙はなおも止まらない。
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