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臨時会議 2
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施設長は深くため息をついた。それが、幸月の現状、彼が抱えている傷に対するものであることは理解していたが、やはり自分のコミュニケーションの取り方に不足があったと感じざるを得ない。俺もまた、意味なく資料に顔を俯けた。
「幸月の担当を変えてみるか。女性職員に変更してみるのはどうだろう」
「施設長。私の意見としては、幸月君はまだこの環境に慣れていないだけではないかと思います。冴島先生との相性は、健康診断の時やそれより前の処置で見た限りでは悪いとは思えません」
施設長の担当変更案に間髪入れずに意見したのは介だった。彼はまっすぐに施設長の目を捉えていた。俺を擁護したい、というよりは、ただ事実を告げて変更の必要は無いと言っているだけのように見える。介は仕事に私情は持ち込まない。
「ですが、このままあと一週間様子を見るというのもどうなんでしょうか。保護したばかりの子供の担当変更は珍しいことじゃないですし、今のうちに試せることは試すのが得策だと思いますよ。これまでの子供達を見てきても」
今度はベテランの女性職員が口を開いた。俺よりもうんと長くここで勤めている彼女の言葉は、どうにも説得力がある。介は彼女に「そうですね……」と何かまだ言いたげに言葉を切り、そしてまた施設長を見た。最終判断は施設長だ。
施設長はうぅんと唸った。腕を組んでしばし黙考した後、俺の2つ隣に座っていた花見さんに視線を向けてこう言った。
「花見はどう思う?」
花見さんはわかりやすく狼狽えた。「えっ、と」と俺をちらりと見た後、可哀想なほどに眉を八の字に下げて口を開いた。
「担当は、変えてみても良いのではないかと思います。職員がころころ変わるのは、子供達にとってあまり良いことじゃありません。特に、信頼関係が築けた後では難しいので、幸月君が一番落ち着ける人を今のうちに見つけるのが、良いかと……」
「花見、お前に任せてもいいか?」
「わ、私ですか?」
「感情を出すのが苦手な子供は得意だろう。これまでも、そういう子供と相性が良かった」
「そ、うですね……」
花見さんはもう一度俺を見た。「本当にいいのか?」という目をしている。俺に申し訳なく思っているのだろう。担当変更は珍しいことじゃない。何も気にすることは無いというのに。
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