アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
新しい日常 6
-
向かったのは隣の隣にある学習室だ。ここと、もう一つ隣の二階のつき当たりの部屋は小学校と中学校に通う者、そして高校生レベルの子供達が勉強するために開かれている。つき当たりの部屋では小学生と中学生の子を交えた勉強会が開かれており、職員二人ほどに対して子供が5人程度集まっていた。もう一つの部屋のほうでは、高校生レベルの子が一人黙々と勉強に励んでいる。俺は、その静かな教室に足を踏み入れた。
がらがら、と戸が開く音がすると、中にいた少女は俯けていた頭をぱっと上げてこちらを見た。そして俺を認めると、「先生っ」と言ってふわりと笑った。
「ちゃんと勉強してて偉いな」
そう言いながら歩を進め、彼女の向かいに座る。その少女、さくらは長い黒髪をふわりと胸元で揺らした。
「だって、お勉強楽しいもん」
そう言った彼女の前に開かれているノートには、中学三年生レベルの数学の問題が綺麗な文字ですらすらと書かれていた。どの問題にも赤丸がついている。桜は施設でもとりわけ勉強好きな子だった。
「あーあ、私も高校に行きたかったな。そしたらもっとたくさん勉強できたのに」
桜は机に頬杖をついて、ぷくーっと不満気に頬を膨らませた。その顔は窓の外に広がる青い空に向けられている。きっと、その先にある手の届かない場所を彼女は見つめているのだろう、と思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
42 / 801