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新しい日常 20
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それから1時間ほど経っただろうか。雪君は絵本に夢中で、読み進めるほどに積極的になっていった。
「これはなに?」
「王子様とお姫様は幸せになったの?」
「お花はお外にあるの?」
「ぼくも、お花見たい」
たくさんのことを問いかけて、どんな答えが返ってくるかキラキラした目で俺を見つめる。たった1時間でここまで慣れられることに驚きつつ、雪君が話しかけてくれるときは俺もわくわくした。次はどんなことを聞いてくるだろう、答えたらどんな顔をするだろう。雪君はこれから、どんな表情を覚えていくのだろう、と。
もう何冊目かわからない絵本を読んでいたとき、読み進める俺の腕を、雪君はまるで読むのをやめてと言うかのように掴んだ。雪君のほうを見ると、彼は下唇を軽く噛んでもじもじとしている。
「せんせ……」
「どうした?」
そう聞いた瞬間だった。雪君は「んっ」と声を漏らしてぎゅっと目を瞑った。そうして最初に気が付いたのは、つんとしたアンモニア臭。そして、しょろしょろという尿の漏れる音だった。
我慢させていたのか、とその時気がついた。もしかしたら、雪君自身も興奮して尿意に気が付いていなかったのかもしれないが、そこは俺が気付いてやるべきだった。雪君の成長ぶりを喜んで、そういう当たり前のことを失念していた。
「うっ、ふ……ぅう」
「雪君、大丈夫。さっぱりして、新しいズボン履こう」
排泄が終わったところでそう声をかけ、雪君の手を取る。しかし、彼は立ち上がらなかった。否、立ち上がれなかった。
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