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再会2
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「幸月くん、量は少ないですけどちゃんとご飯食べれてますよ。冴島さんがくれたテディベアも良く抱きしめてますし……」
幸月の代わりに答えたのは花見さんだった。
「そうですか。ぬいぐるみを抱っこできるようになったんですね。よかった」
前はまだお腹を撫でるくらいしか出来ていなかったはず。抱きしめることができたのは大きな成長だ。
目の前にいる可愛らしい子供を見つめる。
この子が、あのテディベアを抱きしめる姿が見たい。きっと優しく、壊れものを扱うようにそっと抱きしめるのだろう。
それからこの子の声も聞きたい。痛いとか、嫌とか、そんな悲しい言葉ではなく。
この子自身の喜びが思わず口から溢れてしまったというような、そんな声が近くで聞けたなら……。
幸月を見ていると、叶うはずもない欲がどうしようもなく胸の内から湧いてきた。
俺はどうしてこの子にこんなに執着しているのだろう。他の子供と何が違うのだろう。
あぁ、嫌だ。だめだ。このままだと、ここで働くのが苦しくなる。
さっさとこの場から立ち去ってしまおうと、俺は花見さんに軽く頭を下げた。
「では、今後も幸月のことよろしくお願いします。じゃ、またね、幸月」
また、なんて無ければいいと思いながら。
二人の横を通り抜けようとした。その時だった。
「えっ」
クイっと、軽い抵抗を体に感じる。ワイシャツの裾が引っ張られているらしいと気がつき後ろを振り向くと、そこには俺の目をしっかと見つめて無表情で手を伸ばす幸月の姿があった。
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