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再会4
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「……施設長のところに、行ってきますね」
花見さんの一言で現実に引き戻された。
幸月から体を離し花見さんを見ると、彼女は柔らかく微笑んで俺たちを見つめていた。その表情は全てを理解しているようで、少し照れくさい。
「幸月くんと部屋に行っていてください。きっと、離れたくないでしょうから」
「ええ、ありがとうございます」
花見さんは言葉少なに立ち去った。おそらく施設長に説明し、この後のことも提言してくれるのだろう。
俺はまだ胸にくっついている幸月の肩を掴んで引き離そうとした。しかし、それがまた別れに繋がるとでも思っているのか、渾身の力でくっついてこようとする。それを見て、「可愛いな」なんて思ってしまった。
「幸月、一緒に部屋に戻るだけだぞ。離れないよ」
しかし幸月は動こうとしない。
仕方ない。
俺は幸月を持ち上げた。足が浮いたことに驚いたのか幸月は「ひゃっ」と控えめな声を上げたが、怖がってはいないようだった。
幸月の部屋に入ると、俺がいた時よりも物が増えていた。花見さんが幸月に良くしていてくれたのがよくわかる。心の中で感謝した。
幸月を下ろすが、彼の腕はやはり俺を離そうとしないし、ビー玉のようなその目もじっとこちらを見つめている。目を見開いたままの様子からは、瞬きする一瞬にでも俺が消えてしまうのではないか、そんな不安が見てとれた。
「大丈夫、もうどこにも行かないよ。全く、突然頑固になりやがって……」
俺はその場に腰を下ろした。幸月は俺の胸にぎゅっとくっついている。その姿はまるでコアラのようだ。俺は胸の中の幸月をそのままに、窓の外に見えるオレンジ色の空を見上げた。
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