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介と夜 2
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「はい、百瀬です」
「あぁ、今日の担当は介か。悪い、幸月がいまかなり興奮してて、落ち着きそうになくてな。このまま離れるわけにいかないし、眠剤か鎮静剤お願いしたくて」
「なるほど、わかった。今行くね」
それから10分ほどで介は部屋にやってきた。ドアの開閉音に顔を上げた幸月は、新たな大人の登場に一層顔を青くさせた。
「やだあああ!!!!」
そして、ここに来てから1番であろう大声を上げた。
このまま引き離されるとでも思っているのだろう、幸月は全身の力を振り絞って声を上げ続けた。
耳を劈くほどの大音量に、何かあったのかと駆けつける大人たちの足音が廊下に響く。廊下の職員には介が説明し、俺は胸を大きく上下させて荒い呼吸を繰り返す幸月を宥めていた。
「確かに、これは重症だね……」
介が苦笑混じりに呟く。
「ここに勤務してから初めてだよ」
担当児童が職員に懐くことは珍しくないし、朝夕離れることを嫌がる児童も多い。
しかしそれは、保育園に通い始めたばかりの子供が親と離れるのを嫌がるようなもので、一過性に過ぎず、離れてしまえばケロッと収まることがほとんどだ。しかし、幸月の場合は1度ちゃんとした説明も無く長期に渡って離れてしまったために、「待っていても来てくれない」という感覚が強く植え付けられてしまったのだろう。
これに関しては俺が悪い。ただでさえ、ここに来る子供たちはまともな愛に飢えているのだから。
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