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発熱 3
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介を呼びたいが、両手を離せない。話した途端に頭を叩き始めるのは目に見えている。
「幸月、俺の声を聞いて。落ち着いて」
「うぅー……」
幸月は低く唸った。
「大丈夫。怖い夢でも見たかな。大丈夫だよ……」
俺は何度も声をかけた。「大丈夫」「もう怖くない」何度も何度もそう繰り返し、どれだけ時間が経っただろう。
徐々に幸月の体から力が抜けていき、触れている体がまたじわじわと熱くなってきた。
「疲れたな、怖かったな。介を呼ぶから、すぐに良くなるよ」
抑えていた手首を離すと、そこは俺の手形がくっきりとついて赤くなっていた。きっと痛かっただろうと思うと、胸が締め付けられるようだった。
幸月をもう一度布団に寝かせて、すぐにPHSで介を呼ぶ。幸月が錯乱することを予想していたらしい介は、慌てる素振りも無く素早く部屋に来てくれた。
解熱剤と弱い睡眠剤を入れるときも、幸月は怯えなかった。
処置を終え、眠りについた幸月を見て介は言った。
「交流会がトラウマを思い出させちゃったのかもね。幸月くんは、もう少し少人数から慣らしていくのがいいのかも」
「そうだな。でも、今すぐってわけにはいかない」
「うん。しばらくは桐也と2人でいるのが安心だろうね。調子が戻ってきたらまた考えよう。きっと大丈夫だよ」
介に肩をぽんと叩かれた瞬間、ふっと体が軽くなるような感じがした。そしてやっと、自分もまた緊張状態にあったことに気がついた。介はそれを察して、こうして「大丈夫」と言ってくれたのだろう。
こういう時、彼の方が大人だと感じる。
「ありがとう」
介は優しげに微笑んで、手を振って部屋を後にした。
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