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「十七歳の誕生日、おめでとう。うるのこれからの一年が、よりよいものとなりますように!!」
おどけるように言ってのけてから、紅貴は続いて執事にグラスを握らせた。中身は、子供用のシャンパンだ。
「おい、主役だろう。乾杯の温度??とれよ。」
漆はにこっと微笑んで、『音頭です』と訂正しておく。笑顔のまま、執事はこれ以上ない美しい会場と真心いっぱいの人々を見渡して、恭しく一礼する。
「…本日は、このような素敵な会に招いていただき、ありがとうございます。大変恐縮ではありますが、乾杯の音頭をとらせていただきます。」
グラスを高く掲げ、漆は大きな声を発した。
「谷ヶ崎家の更なる繁栄をここにいらっしゃる全ての人の幸せをお祈りして、乾杯したいと思います。皆様、ご唱和をお願いします。…乾杯!!」
皆がグラスを持ち上げ、乾杯を口にする。その様子を目にして、執事はふっとまた微笑んだ。
紅貴は、すぐさま執事が胸に抱いていた花束を持って、近くのメイドに預ける。漆の片腕を掴んで、豪勢な料理が並んでいるテーブルへと進もうとする。
「なぁ、うる。何食べたい??今日は特別に、お前の好物のオンパレードだぞ!!」
二人の道を遮ったのは、漆の父親だった。すっと現れると、紅貴に対して謝罪の一礼をする。
「…申し訳ございません、紅貴お坊ちゃま。燈様が漆に会いたいと言うので。」
谷ヶ崎燈。漆の父親が仕える谷ヶ崎家現当主にして、紅貴の父親でもある。多忙で仕方ない自分の父親が漆に会いたいというのだ。紅貴は渋々執事の腕を引っ張るのをやめた。
「…わかった。」
すると、漆の父親がすっと後退る。その場に堂々と現れたのは、紅貴の父親だった。がっしりとした両肩。大きな体。筋肉質な身体で、臙脂のスーツがパンパンだ。年齢からか。紅貴とは似ても似つかない落ち着きで、息子に仕える執事へと逞しい腕を伸ばす。
「やあ、漆君。…うちの息子がいつもお世話になっているね。」
いつの間にか漆は低姿勢になっていて、しずしずと頭を左右に振った。
「とんでもございません。…紅貴様の身の回りのお世話は、私めに与えられた仕事でございます。」
燈は何度も大きく頷くと、隣に控えていた漆の父親に視線を送る。
「…だとさ。お前の教育の賜物だ。」
漆の父親は頭を垂れたまま、硬い声音で答えた。
「…もったいなきお言葉にございます。」
ふむ、と顔を漆へ戻した父親は、思い出したかのように執事の隣に佇んでいた実の息子へと視線を注いだ。
「…紅貴、あんまり漆君の手を煩わせるなよ。」
紅貴はえ~と不満げに唇を前に突き出す。
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