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「オレ、ちゃんといい子にして過ごしているよ??」
一瞬、ふっと口元を和らげた燈だったが、すぐさま表情を引き締め、息子と向き合う。
「…そういえば、来年お前は12歳になるんだったな。」
12歳。…その年齢を聞けば、世間の人々は皆ピンとくる。
この世は、俗にオメガバースと言われている。
男女の別に第三の性…α、β、Ωという種が存在する。
大体の人口比率は、β>α>Ωといわれている。
αは、種族的に秀でており、物凄いカリスマ性を持っていると言われている。一部例外も存在するが。後に出てくるΩフェロモンに当たると理性を滅ぼされ、本人の意志とは関係なく強い発情状態に陥り獣のようになってしまう。この一時的な発情期は、ヒートと呼ばれる。
βは、発情期現象がなく、Ωフェロモンに惑わされても理性で押しとどめられる。
Ωは、三週間ほどかけてαにとっては大天敵のフェロモンの元を身体に貯めてしまう。そして、一週間かけて発散する。これを発情期という。
また、近頃は抑制剤…フェロモンの発散を抑える服用する“薬タイプ”と、発情の鎮静化と避妊薬を兼ねた“注射タイプ”が出ている。Ωも社会復帰が可能になってはきている。それから、きちんとした相手を見つければ発情期での諸々の症状は落ち着く。
きちんとした相手…つまりは番である。
番になる場合、性行為中αがΩの項を噛む行為が必須である。この行為によって、他者のフェロモンに惑わされなくなる。また、Ωは別の人間の相手が出来なくなるという。
他にも、“魂の番”という話がある。“魂の番”とは、種やヒートのあるなしに限らず、視線があった瞬間、双方が恋に落ちるという。…眉唾物の話で、要するに都市伝説である。
谷ヶ崎家は代々αの家系だ。現在の谷ヶ崎家では、当主が若い頃に妻を亡くしており、跡取りは一人息子の紅貴だけとなっている。つまり、紅貴もまたαの血統でなくては家の繁栄は望めないのだ。
紅貴がαかそれ以外なのか。第一次性別検査は、12歳の時に行われる。だから、先代である燈は息子の第三の性を気にしているらしかった。
ははっと乾いた笑いをたて、紅貴は小首を傾げてみせる。
「…何心配しているんだよ、親父。オレは生粋のαに決まっているだろう。」
続けて紅貴は肩の高さまで両手を広げ、首を左右に振ってみせる。
「…そうか。」
燈は重々しく答えると、くるりと踵を返して、パーティの他の集まりに参加していった。
燈の後ろ姿が見えなくなった、矢先だった。紅貴の手からグラスが滑り落ち、床で砕けて粉々に割れた。漆の対応は素早かった。紅貴を後方に下がらせ、床に跪いた執事は胸ポケットから白いハンカチを取り出すと、手袋をした腕で次々と欠片を集めていく。
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