アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
09
-
紅貴はその場に居るのが気まずくなり、小さく謝罪の言葉を口にする。
「…悪ィ。」
「いえ。…身の回りのお世話をするのが、私めの仕事にございます。」
端正な横顔で淡々と後片付けを続ける執事に、紅貴は呟く。
「お前さ…。」
「はい??」
執事が小さな主の顔を見上げる。…紅貴は急に息苦しさを覚え、いや、と顔を左右に振った。
紅貴は自分自身が情けなくなった。
『仕事じゃなくても、オレの傍にいてくれよ。』
そんな戯言を従者に向かって口にすべきではないと、わかっているはずなのに。
テキパキと無駄のない動きで割れたグラスの破片を集めハンカチに包むと、執事は小さな主に失礼しますと一声かけて一礼し、姿を消した。
紅貴は、主役なのに後かたずけを押し付けて良くなかったな、と考えつつ、話したい相手も見当たらないのでフラフラと部屋の中央へと歩み寄っていく。そこにはちょうど、三列あるテーブルのど真ん中であり、豪華三段のチョコレートケーキが聳えていた。
うまそうだな、とぼんやり見上げている内に、彼の執事はパーティーに戻って来ていた。忙しなく紅貴に新しいグラスを手渡しつつ、声をかけてくる。
「…ケーキ、一皿もらってきましょうか。」
今日のバースデーパーティーの主役とは思えない台詞に微苦笑を浮かべつつ、紅貴は相手に緩く顔を左右に振って答える。
「…いや、後でいいんだ。」
けど、と唱えながら、ケーキを見上げる。
「随分立派なもんを作ったなぁと思ってさ。」
主人と同様にケーキを見上げ、執事も首肯を示す。
「…確かに、あなたの誕生日はこれより大きなものをオーダーしましょうか。」
ははっと弾けるように笑って、紅貴は手を左右に振る。
「いらねぇ~よ。オレは…その、もっと小さいのがいいんだ。こういう盛大なのも悪くはないけど…。オレはもっと、街のケーキ屋で売っているようなホールケーキがいいんだ。」
はあ、と執事は気の抜けた返事を返す。
「…あれくらいでよろしいのですか??私でも作れると思いますが。」
「妙なところで張り合うなよ。」
機嫌よくなった小さな主は、グラスをひょいと傾け、ピンク色のシャンパンを一口ぐびりと飲んでから気障にウィンクしてみせる。
「…じゃあ、オレの誕生日はお前の手作りケーキを頼むかな。」
「やはりチョコですか??」
「いいや、オレはその…王道の苺のショートケーキがいいかな。」
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 120