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漆は口元に微笑みを刻みつつ、恭しく一礼してみせた。
「かしこまりました。」
「…うん。」
紅貴は小さく頷いてから、頬を緩める。
「今から、誕生日が楽しみだな。」
執事も賛同する。
「ええ。…来年の夏までに、とびきり美味しい苺のショートケーキが作れるよう、勉強しておきます。」
二人はダイニングの天井を突き抜けそうな、豪勢な三段のチョコレートケーキを見上げる。二人の脳裏には、もしかしたら来年の主人の誕生日会の様子が浮かんだのかもしれない。
日めくりカレンダーがまた捲られていく。12月24日。クリスマスイブ。
屋敷のロビーとダイニングに観賞用のツリーが設置された。普段は絶対に許可されない例外だが、今日だけは燈の命があり、紅貴は彼の執事と共にツリーの飾りつけを任された。二人とも、学校は冬休みに入っている。
クリスマスといえば、子供はサンタの話題で持ち切りだ。谷ヶ崎家のたった一人の子供である紅貴も、サンタの存在を未だ信じ、胸を躍らせていた。
谷ヶ崎家のサンタは、枕元に欲しい物が書いた紙を入れた靴下を置いておくことで願いを叶えてもらえる。翌朝目覚めると、紙の代わりに靴下の中に欲しいものが贈られているのだ。
近頃、紅貴と執事の間で話すのはサンタにどうやったら難しい願い事を聞き入れてもらえるか、である。紅貴が一方的に気にしているだけなのだが。執事はその度に、“いい子にしていたら必ず叶えてくれる”と念押しするのだが、紅貴はどこかその案に賛成しがたく見えた。
「…なあなあ、親父の書斎に暖炉あったよな!!暖炉!!」
午前十時半過ぎ。ツリーに雪の代わりにつける綿を解しつつ、目を爛々と輝かせ、紅貴は執事に問いかける。小箱に収まっているツリーの飾りをあれこれ物色していた相手は、見るからに胡散臭そうに半眼になって、主人を嗜める。
「…ありましたが、あれは装飾用の暖炉ですよ。あくまで、調度品の一つです。」
「暖炉を焚こう!!薪を入れるんだ!!煙突からの煙で、サンタさんもきっと気づいてくれるに違いないだろ。オレらのSOSに!!」
「狼煙かっ!!…あと、私の話を聞いていましたか??装飾用なんですよ??煙突はありませんから。」
断言する執事に、小さな主はしゅんとする。
「…なぁ~、うるはサンタさんに何お願いするんだ??ウイッチ??SS5??」
「最新のゲーム機でも何でもありませんよ。」
そうですね、と少し考えてから、執事は慎重に答える。
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