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窓に両手をくっつけ、頬すらガラスに密着しそうな至近距離で執事の話を聞きながら、小さな主はうん、うんと頷きを繰り返す。
「わかった。…外で遊ぼう!!」
「…恐れながら、朝食をお忘れになっておりませんか??」
瞬間、あ、とぽかんと口を開けた小さな主はぐじゃっと顔を崩して、今にも泣きそうになる。主の急変に慌てたのは執事だった。
「だっ、大丈夫ですよ、紅貴様。雪はそんなにすぐには溶けません。」
若干悲しげな表情を執事に向け、紅貴は再度確認する。
「…本当か??オレが朝ご飯を食べている間に、雪が全部なくなったりはしないか??」
キラキラと希望に満ちた双眸に、執事は途端に言葉に詰まる。
「…たっ、多分。」
「わかった!!」
朝ご飯だ、と楽しげな声をあげ、11歳の次期当主は自室を駆け回る。…執事は一度深呼吸して息を整えてから、やんちゃな主に向き直った。
数分後。
小さな主の朝の支度を終えた執事が、部屋の外、廊下へと出ていく。扉に背を預け、執事は淡々とした動作で胸ポケットからぐしゃぐしゃになった紙を取り出す。
紙を広げると、そこには紅貴特有の馬鹿でっかい鉛筆の文字で、『オレをαにしてください』と記してある。執事は普段崩すことのない冷たい双眸をツーと眇め、ぽつんと呟いた。
「…サンタにだって、第三の性は贈れませんよ、紅貴様。」
漆は重々しく呟くと、片手で目元を覆い隠し、長い長い溜息をつく…。
日めくりカレンダーは次から次へと捲られていく。ついに大晦日のページが破られ、屋敷には新しいものが飾られた。1月、2月を過ぎ…まだ冬の寒さが抜けきらない3月下旬。
とある夜の話である。
午後八時過ぎ。紅貴は廊下ですれ違う顔馴染みのメイド達にすらドッキリしつつ、左右と前後をじっくり確認してから慎重に屋敷の中を進んでいった。目指した先は、使用人用の入り口でもある屋敷の裏玄関だ。おっかなびっくり扉を開け、外に出る。
屋敷の外はひんやりとした空気が漂っていた。すっと空気を吸うと噎せ返りそうになるほど冷たい。紅貴は我慢できず、くちゃんと小さなくしゃみを一回してしまい、後で血相変えて辺りをキョロキョロ見渡した。…すっかり挙動不審である。
屋敷の裏口から十メートルほど奥に進んだところ、塀の内側ギリギリに粗末な木製の小屋がある。小屋に一つしかない窓は常に真っ暗なはずが、今日は目に優しいオレンジ色の光が灯っていた。
立てつけの悪い木製の引き戸を苦労して開けると、中から土や埃の独特な匂いが漏れてくる。うっと鼻をつまんでいると、小屋にいた先客から声がかかった。
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