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「…入るなら入るでさっさとしなさい。他の使用人にバレたら大目玉ですよ。」
急かされて、紅貴は弱りながらもガタピシいう木戸と戦い、戸締りを何とか終えた。
改めて、木製の小屋の内部を見渡す。屋敷に置かれていない安っぽいスチール製の棚が幾つも立ち並んでいる。棚に置かれているのは、腐葉土の袋だったりジョウロやシャベル、ホースの新品といった庭師の手入れに必要な物ばかりだ。…ここは、庭用の品々が置かれた谷ヶ崎家の倉庫なのである。
木製の倉庫は、あまり金をかけて作っていないらしい。床は凸凹で足場は悪いし、灯りは天井の剥き出しの梁から垂れ下がる裸電球一つである。光源としては大層心もとない。
部屋の隅でスチール製の棚を背にするように、土だらけのあまり綺麗とは言い難いパイプ椅子を出し、燕尾服が汚れるのもかまわず深く腰掛けているのは執事の漆だった。
戸を背に棒立ちになっていた紅貴は、おずおずと喋りだす。
「…部屋の扉に、『20:00 秘密基地』ってメモが挟まっていたから…。」
もにょもにょ口ごもる小さな主に、執事はぞんざいに鼻をふんと鳴らして一言。
「…確かに。僕があなたを呼びましたよ、紅貴様。」
名前を呼ばれた紅貴は、不服そうに顔を顰める。
「その…“様”つけんの、やめろよ。二人の秘密基地じゃ、主人とか使用人とかはなしって決めただろう。」
「…じゃあ、“紅貴”。」
主人の名を呼び捨てにして、従者は席からゆっくりと立ち上がる。居心地悪そうな小さな主に、漆は言った。
「…近頃、目の下にクマを作っているみたいですね??メイドの話では、夜中にあなたの部屋から物音がすると。随分夜更けまで起きているようではないですか。冬休みとはいえ、気が弛んでいるのではないですか??」
紅貴は両手を後ろにして、落ち着きなさげに答える。
「それは…最近、よく眠れなくて。」
刹那、漆の顔色が変わった。
「…よく眠れないのですか??」
たん、たん…。歩み寄ってくる執事に、紅貴はじりじりと後退りを始める。漆は瞳を鋭くして、声色を落としていく。
「…執事の仕事は、主人のサポートです。仕える主人に心身共、健やかに日々を過ごしてもらうのが我々の務め。」
紅貴の前に来ると、彼の執事は恭しく跪き、少年の手をとった。
「…紅貴、何か悩み事があるんですか??」
「…い、言えない。」
「どうして??」
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