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紅貴は口をきゅっと引き結ぶ。…漆はズルい。執事の優しい声で、これまで小さな主は何度も唆されて、口を割らされたのに。わかっていて、紅貴の心を暴こうとする。
「…は、恥ずかしい。」
紅貴は片拳で口元を押し隠し、俯きがちになる。小さな主の様子を眺めていた漆は、立ち上がるとその手を小さく引いてやんわりと抱擁した。
「…紅貴。」
耳元で囁かれると、紅貴の心は酷く乱れる。漆は仕事としてやっているのだとわかっていても、縋りつきたい心地になってしまう。
「これなら、紅貴の顔は見えません。少しは恥ずかしくないのでは??」
漆の提案に、小さく頷いてから、小さな主は執事の背に腕を回して告白した。
「…第一次性別検査の結果が、αじゃなかったらどうしようって…。」
「…不安なんですね。」
一つに合わさっていた影が、二つに分かれていく。紅貴は、半身を剥がされるような思いで…それでも執事から身を離した。
漆はそんな小さな主の思いを知ってか知らずか。視線を合わせ、話しかけてくる。
「…大丈夫ですよ、紅貴。紅貴はきっと、αです。」
「そう、かな…。」
視線を左右に泳がせる紅貴は、まだ不安感が抜けていそうになかった。
「はい。僕が保証します。」
力強い漆の声に、小さな主はようやく自信がついたらしい。それまでの強張った表情が嘘のように、和らいだ笑みを見せた。
「うん!!」
すると、不意に紅貴が小首を傾げる。
「…そういえば、今まで訊いたことがなかった。漆の第三の性って何なんだ??」
漆は僅かに反応したが、まだ小さな主は彼の異変に気づかないままでいた。
「ぼ、くは…。」
出し抜けに、紅貴が声を発する。
「あっ!!…そうだ、漆の親父さんはβっていつか聞いたな!!じゃあ、漆もβなのか??」
漆は咄嗟に口を僅かに押し開いたが、すぐに閉じて…再び動かしだす。
「…そう、ですね。僕も、βです。」
「そっか!!」
じゃあ、今のオレとお揃いだな、と小さな主が弾けるように笑う。紅貴は気づかない。漆がそっと、垂らしていた両の手を拳にしている点に…。
「…ついでに訊くんだけどさ。漆のおふくろって、どういう人か話を聞いたことないんだけど…。」
紅貴も子供ながらに踏み込んだ質問だとわかっていた。が、好奇心には勝てない。言い終えた後で、両手をブンブン振り回す。
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