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紅貴の苦しげに振り絞る声に、執事はやや目を伏せてから大きく頷く。
「はい。…私は、βですよ。」
ははっと小さく笑い飛ばしてから、紅貴ははにかんだ。
「…よかった。せめて、お前と同じ性別で。」
漆は一瞬息をのみ…ぎこちなく続けた。
「そう、ですね…。」
執事の変化に、動揺を隠せない紅貴は気づけずにいた…。
どんな絶望を味わったって、月日は歩みを止めはしない。12歳の誕生日から、また一年経ち、二年…。
七月下旬。14歳になった紅貴は、中学校の前に横付けされている車に乗り込んで、後部席から身を乗り出すようにして運転席に声をかけた。
骨太で長身な身体。ここ三年で、紅貴の外見はすっかり変わってしまった。小さくて幼く、非力な男の子の面影は日々薄れつつある。
「…これからようやく、待ちに待った夏休み!!迎えも今日まででいいぞ、漆っ!!」
ニカッと笑う紅貴に対し、20歳になった若き執事はふぅと息をついて、バックミラー越しに中学三年生の主人を見つめる。
「待ちに待ったって…。これから夏休みだからって浮かれていては困ります。大体、夏季課題だって山ほど出ているでしょうし、夏休みは遊びほうけていい時間ではありませんよ。」
瞬間、紅貴は両耳にそれぞれの人差し指を突っ込んで、大声で喚きだす。
「あ~、わかったわかったって。」
「…わかってないでしょう。」
若い主人に対し肩を竦めつつ、運転手は背を伸ばしてハンドルを握った。…ややあって、車がゆっくりと動き出す。
移ろいゆく車窓の景色をぼんやりと眺めていたら、漆から若い主へと声がかかる。
「…紅貴様は、夏休み御友人と遊ばれる予定はございますか??」
「…特にない。」
お前は、と訊きかけて…紅貴はさっと深く俯く。後部席の相手の異常を機敏に感じ取った運転手は、口を開く。
「…紅貴様??」
お前は、と紅貴は掠れ気味の声を出して…ぎゅっと目を閉じて執事へと質問する。
「だ…ッ、大学でカノジョとか出来たのかよ!?」
途端、キキーッ!!という甲高い音と衝撃が二人の身体を襲った。
「あっぶね!!」
叫ぶ紅貴に、執事が大声で言う。
「…今のは不可抗力ですってば!!」
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