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「…お前の許嫁も同席する。」
「…は!?」
茫然とする紅貴の足元で椅子が負荷に耐えかねたのか、きぃ~、と小さな悲鳴をあげた。…主人の一歩後方に佇んでいた漆も、小さく息をのむ。
会社から車で十分ほど。有名な高級レストランへと、谷ヶ崎親子、源親子は向かっていた。リムジンと高級車…二台の車で移動する途中、運転手である漆に次期当主は文句たらたらだった。
「ぬぅわぁ~にが『お前には言ってなかったが…』だよ!!…急に許嫁と顔合わせって、それ普通本人に真っ先に言う必要あるだろっ!!ってか、張本人のオレが許嫁決まっていたことすら知らなかったって、すんげぇ~おかしくない!?」
ぶつくさ言って不機嫌マックスの紅貴を執事は諫める。
「ま…、まあまあ。今回はただの顔合わせだけですし。考えようによっては、よかったじゃありませんか。急にお見合いしろと言われても、紅貴様は戸惑うだけでしょうし。」
でもさぁ~、と紅貴は両頬をぷぅっと膨らませる。
「それってただ飯食うだけじゃなくて、要するにオレが高慢ちきαお嬢様の機嫌取りをしなくちゃならないんだろ!?しかも、ぶっつけ本番で!!…なあ、漆~。オレ、上手くやれる自信ないよぉ~…。」
シートに身体を預けるように両腕を大きく広げ脱力する次期当主に、執事は優しい言葉をかける。
「…大丈夫ですよ。紅貴様は優しい方ですから、燈様が御眼鏡にかなったαのお嬢様をもてなすことが出来ると思います。」
ハンドルを緩々と操りながらも、柔らかく微笑む執事の力強い言葉を聞いて、紅貴は背筋を正す。
「そっ、そうか。…じゃあ、頑張ってみようかな。」
「はい。αの女性を、我々βの心意気で楽しませてあげましょう。」
「うん!!」
紅貴は弾けるような笑顔を見せた。バックミラーで主人の表情を確かめ、執事は小さく頷いた。
「…紹介しましょう。こちらが、私の息子の谷ヶ崎紅貴です。」
レストラン内。隣に立つ燈に目で促され、紅貴は渋々頭を下げた。
…丸く大きなテーブルに純白のテーブルクロス。座り心地のよさそうな椅子。卓上には、銀のカトラリーがずらりと並ぶ。…幾つも点在するテーブル席の前で、紅貴は彼女と出会った。
「遠瀬院 紗千香(えんぜいん さちか)といいます。」
白を基調としたレストランは、天井に無数の照明があり、紅貴は少し眩く感じた。だが、目の前の令嬢の方が紅貴にはより直視できない気高さがあると感じた。
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