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さらりと問題発言する執事に、悪目立ちを嫌がる主人は慌てる。
「コーディネイトじゃねぇんだよ、燕尾服はやめろっ!!」
はあ、と執事は気の抜けた返事をする。
「何か問題がございますか??この燕尾服は、執事の正装にございます。…この服を脱いでしまったら、私が執事という目印を失うのも同じこと。」
「…目印でも何でもい~けど、オレの気が休まらねぇんだよ。隣ですまし顔の燕尾服着た人間がいてみろ。執事だってすぐにバレちまう。じゃあ、お隣さんはお金持ちなのか…なんて勘ぐられたくねぇんだよ。」
途端に執事はしゅんと肩を落とす。
「ダメですか、燕尾服…。」
珍しく弱る執事に、主人はもごもごと口ごもりだす。
「ダメってほどじゃないけど、今回はパス!!」
とことんまで執事に弱い紅貴だった。…一方で、執事は最後の足掻きと言わんばかりに目の力を強くする。
「…実は、この燕尾服以外の着替えを持っておりませんので、申し訳ありませんが。」
みし…っ、と音を立てて、後部席の主人は運転席の背を外側から蹴りをいれる。…紅貴の冷静な声色で実に理性的な決定が下された。
「…そのぐれー、幾らでも買ってやっから心配すんな。近くに大型デパートあったろ。まず、あそこに寄れ。」
主人の命令を受けて、漆は情けない表情で眉根を寄せた。
「燕尾服…、NGですか…。」
「お前のその燕尾服にかける謎のプライドは何なんだ…??」
紅貴は、後部席で緩々と頭を斜めにした…。
二人がやって来たのは、大型デパートの二階、服売り場だった。…本音を言えば、主人は漆に自分と同じブランド品を贈りたかった。が、それでは本心がすけすけだし、几帳面な執事は自分にはもったいないとか言って絶対に受け取ってくれないに違いない。このため、ごく一般的な量販店に来ていた。
このくらいは必要だろうと、主人はザルな勘定でカートにカゴを一つ乗せ、店内へと進んでいく。依然、燕尾服姿の漆は手慣れた様子の主人とは違い、あわあわしていた。
「こっ、紅貴様!!カートくらい私が押しますので。」
「…お前は、まず服を探せ。カートくらいオレが押してやるから。」
はあ…、と曖昧な返事をする執事が少々心配で、紅貴は試しに訊いてみる。
「…で、お前はどんな服がいいんだ??」
「そ…、それが。」
わからない、とだけ漆は簡素に答えた。…あっけにとられたのは主人である。
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