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「わ、わかんないってお前…??」
「ち、違うんです…っ!!」
漆は、慌てて手を左右に振る。…紅貴が執事の話を纏めると以下の通りになる。
燕尾服が執事の基本と教えられていた漆は、小学校で昼の服装が自由な時はまだよかったが、中学、高校と制服に身を包む機会が増え、代わりに服と無縁になっていったという。大学の時はどうしたかというと、ファッションセンスが疑わしいのだと友人に伝え(確かに嘘ではない)一緒に服屋へ来てもらい、見立ててもらったのだと言う。…というわけで、と執事は結びを話す。
「…服選びに縁のない人生を送ってきたんです。服屋に来たのも、これで何度目か…指で数えられるぐらいしか。」
執事をよく知っている主人にとっては、得心がいく説明だった。漆は確かに物持ちがいいし、更に洋服の解れをなおす技術くらい一通り身に着けている。他の人が買いなおす場合でも、漆は職人技であっという間に仕立て直してしまうのだ。
「…それでお前、何か挙動が不審なのか。」
漆を見るに、周りをキョロキョロする回数が多い。まだ慣れない場所で、多少警戒心があるのだろう。…確かに、親切な店員に捕まえられたらありがたいが、(紅貴自身は遭遇したことはないが)やたら買うよう勧めてくる押しの強い危ない店員もいるかもしれない。
「…ですから、その、贅沢な頼みで申し訳ないのは百も承知なのですが…。私はカートを押しますので、紅貴様が見立てていただきたく…。」
肩身の狭さを感じてか。どんどん小さくなっていく執事を面白おかしく観察しつつ、紅貴は内心口元がにやけるの待ったなしだった。
言い方は悪いが、要するに今の執事は紅貴の従順な着せ替え人形ではないか。普段から気になっている相手の服を好き勝手に選べる。紅貴は咄嗟に口元を手で覆い、執事から顔を背ける。いい…!!ひっじょうにこの流れ、いい…っ!!
だが、ここでその“お前で遊べるの!?さいっこーなんだけど!!”感を出してはならない、と極めて落ち着き払い、表向きは困惑の顔をつくる。
「…そんなこと言ったって、オレもファッションに精通しているとは言い難いんだよな。適当にいいと思った服をカゴに投げ込んで、試着室で何通りも試してみるって作戦がほとんどだしさ。」
「…では、そのようにしましょう。」
今度こそ快哉を叫びたくなり、紅貴はくるりと後ろを向いて執事の見えないところでガッツポーズを決めた。やった!!これで正式に漆はオレの着せ替え人形じゃん!!わ~い♪
主人の気持ちを知らず、漆は心もとない表情で手近な壁にディスプレイされていた服がかかっていたハンガーを指先で摘まみ上げ、珍妙な物に向けるような眼差しを注ぐ。
「適当にいい、というのも私にはわかりませんし…。」
「そんなの、ひょいひょいカゴに放り込んじまえばいいんだよ。」
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