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口ではそう唱えつつも、紅貴の頭は今や超加速で稼働していた。…さて、漆に着てもらいたい服はどんなのがいいかな??畜生、こう服装に無頓着なら一流ブランドの店に直行するべきだったか。ファッションに疎い相手なら、それとなく理由をつけて高価な服を贈る口実になったのに。…今更ながら、燕尾服を着替えろといった後の己が行動を疑ってしまう。こんな機会は一生に一度あるかないかなのに…っ。
歯噛みしながらも、紅貴の頭はグルグル回っていく。…ふっと思いついたのは、白いブラウス、ベスト、蒼いジーンズのインテリ学生系だ。漆は優男風だし、さぞ似合うだろう。
フェミニンに薄橙のカーディガン、白いシャツ、ベージュのジーンズなんかどうだろう。春の陽だまりを思わせる、漆の柔らかい雰囲気が際立っていいのではなかろうか。
いっそワイルドに、黒いタンクトップ、白いシャツジャケットをわざとボタンを留めずに羽織らせて、下はダメージジーンズで攻めてみるのも一興ではないか。髪なんかもワックスでこういい感じに…ああ、ダメだ。持参してこなかった。オレの馬鹿!!
紅貴が悶々と考えていると、前方を歩いていた執事の足が急に止まった。そのまま相手がくるりと回れ右をするので、主人は怪訝に思って声をかける。
「…おい、進まなくていいのか。」
「服を売っているのは、ここまでのようですね。ここから先は…。」
執事の目線を追うと、先にあったのは水着売り場だった。なるほど、漆が引き返そうとしたわけである。水着は買わなくていいもんな、と思うと同時に紅貴は不覚にも執事だったらどの水着が似合うだろうと考えてしまい、そうなるともう連想ゲームのように脳裏に黒いボクサータイプの水着姿の漆を妄想してしまう。無論、上半身は裸だ。
…ほとんど反射で、紅貴は執事の片腕をとり、その肩に頭をこてんと寝かせた。身動きがとれなくなった執事は、主人にふんわりと喋りかける。
「…どういたしましたか??」
「…べッ、別に…。」
かぁ~っとたちまち赤くなった顔を見られないように必死な主人だった。
幾つか試着した結果、慣れない着替えのオンパレードで疲弊したらしい執事が選んだのは、無難な白いブラウスに黒いジーンズだった。サイズや服の性能で、すらりとした漆の身体のラインが強調される。紅貴としては下手に複数の人の目を惹かせる、より魅力的な格好なのでもっと別の凝った服装がいいと主張したが、慣れない行いでヘロヘロの執事にあまり強くは出られず、結局そのコーデで渋々妥協した。
服装が決まれば、いよいよデートを考える時間だ。大型デパートから出ようとした矢先、紅貴は出入口にあったパンフレットの案内図に、映画館があるのを見つけた。無理に先を歩いていた執事を引き留め、映画を見ようと提案する。
執事はふむ、と顎に指をかけ少し考えると、こちらにどうぞと近くの木製ベンチで主人を休ませると、漆自身も席に座って何やら携帯で調べる。
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