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「そうなんだ…。」
で??、と貝沢は話を戻す。
『俺はその、執事のじいちゃん相手にくらっとはこないんだけど…。お前はきているってわけ??使用人の、それも男相手に??』
「…男って、源は…っ」
紅貴の脳裏に過ぎるのは、薄い肩に華奢な腰つきの執事だ。肩に手を置くと、少し振り返って、口元にやんわりとした微笑を刻む。思い出して、紅貴は口ごもる。
「その…、オレの中では他の同性と一緒に思えないっていうか…。いや、男なんだけど。」
『特別視しちゃうってわけか~。ちなみに、そっちの執事何歳よ??』
「オレより六つ年上。」
年の差かぁ~、と貝沢は思いっきり他人事の如く喋る。…否、他人事で間違いはないが。相談しているのだから、少しは親身になってもよさそうなものではないか。
『まぁ、使用人と駆け落ちだとかいう話はここら界隈じゃ珍しい話じゃないよな。俺達には先祖代々から続く家柄ってものがあるし、簡単に本人の自由意志で捨てられるものじゃないしな。俺達はβでαじゃないわけだから、特に。』
「あれ??お前もβだっけ??」
素っ頓狂な声をだす紅貴に、ええ~、と友人の低い呻きが聞こえてきた。
『…おっ、お前ね…。知っていてα連中から遠巻きにされている俺と喋ってくれていたものと思い込んでいたよ、俺は!!』
「いや、悪ィ。なんか“第三の性”にそこまで頓着しねぇんだよな、オレ…。」
『…親御さんがそういう人達なわけ??』
いや、と紅貴は首を横に振る。…携帯向こうには見えないだろうと思いつつ。
「…父はα至上主義の塊みたいな人だし、幼い頃に亡くなった母も“立派なαになるのよ”なんてオレに言い聞かせて育てていたくらいだしな。」
『ん~??でも、身近な人が“第三の性”にあまり関心がない性格じゃないとそういう風にはならんだろ、普通。』
「そう、かな…??」
紅貴が自分の周囲を振り返る前に、貝沢が話題を戻しにかかる。
『…とにかく、お前はその執事さんが好きなわけだ??』
「好きって、別にそんな…。」
口を開きかけて、言い淀む。ああもう、と貝沢がもどかしそうにする。
『相談内容が有耶無耶だと、俺も答えるに答えられないっての。はっきりしろよ。』
「ど…っ、どうこうなりたいわけじゃないんだ。」
紅貴は一文ずつ丁寧に思いを確かめつつ、今の気持ちを声にしていった。
「ぶっちゃけ、このままでも良いと思っている。最悪、オレの片思いで終わっても、源は執事で、幸いオレの傍にずっと居てくれる。多分、大事が起きない限りは、一生傍にいてくれるだろう。“恋人”じゃない、ってだけで…。オレの気持ちは満たされる。親父の決めた許嫁と結婚して、子供を持っても…許嫁に対して冷めているとか無責任だとか言われそうだけど、それはそれで割り切れると思っている。だって、主人が家を継いで、次代に受け継ぐことはきっと源の…執事の願いでもあるから。」
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