アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
85
-
「…何で源に悩み事があるって思うんだ??」
主人の一言に、衣笠は腕組みしてついでにちょっと首を斜めに倒した。
「それがね、ほらお医者さんにはざっと説明したでしょう??漆君のお父さんが多忙でここには急に来れないってさ。お医者さんもこれを言うべきかどうか悩んだみたい。で、さっき私がお医者さんに呼ばれたでしょう??あれ、代表で呼ばれたみたいなの。」
お医者さんが言うにはね、と衣笠が続ける。
「漆君、αのフェロモンが不安定になっているみたい。お医者さんはよく調べてみないと詳しく話せないけどって言ってね。こう続けたの。彼に心因性のストレスはありませんか??って。」
「心因性のストレス…。」
呟く主人に、衣笠は大きく頷いてみせた。
「ええ。…お医者さんが言うには、そもそもΩのフェロモンが不安定になることはよくあるケースらしいけど、今回みたいにαがなるっていうのはレアケースみたいなのね。この病院で一年に一回受けている健康診断の結果やカルテに異常や原因が見られないものだから、心因性のものではないかって疑っているらしいの。」
「悩み事があるっていうのは、ぼんやりとは…。でも、身体に出るほど深刻化しているなんて知らなかった。」
主人の返答を聞いて、衣笠は片拳を片頬に押し当てる。
「う~ん…。漆君は一人で抱え過ぎちゃうところがあるもんなぁ…。主人である紅貴様も知らないなら、ちょっと難しい問題なのかも。」
「さっき…。」
ふと呟くと衣笠が、んっ??という表情で主人の顔を覗き込んでくる。言うか迷った挙句、結局紅貴はメイドに教えた。
「…いや、さっきの源の態度も変だったな、って思ってさ。一泊入院してってお医者さんが言ったのに、反対したろアイツ。…なんか、らしくないよな。」
「そうね、普段優等生の漆君っぽくなかったね。」
やっぱり悩み事かなぁ、と衣笠はがくっと俯きがちになる…。
その日は牧原が運転する車で、紅貴と衣笠は屋敷に帰った。その後、燈の連絡で正式に漆不在の間、執事代行は衣笠になった。
その後、紅貴は病院に泊っている専属の執事を心配しながらも、他には変わりのない生活を続けた。何事もなく一夜が明け、衣笠に起こされる。目覚めるとと、衣笠が紅貴の部屋を歩き回って窓のカーテンを開け放っていた。
ぼんやりしながら、紅貴は静かに考える。何かが足りない気がする。…漆がいないだけではない。…何かが。
「…坊ちゃま、今日の朝食ですけどね~。」
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
85 / 120