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「うわあっ!!」
「きゃあっ!?」
紅貴が出し抜けに叫んだものだから、ほぼ同時に釣られて衣笠も悲鳴を上げさせられる。
「…ビッッックリした、何ですか、坊ちゃま!!」
憤る衣笠に、紅貴はぽつんと返す。
「…夢だ。」
「え??」
目が点になっている衣笠を横目に主人は続けた。
「…あの、侵入者の夢を見ていないんだ。」
「夢??」
しまった、と紅貴が我に返った時にはすでに何もかもが手遅れになっている。
紅貴の横たわる天蓋ベッドの布団の上に、身を乗り出したおしゃべり大好きメイドが目を爛々と輝かせて意気込んでいた。
「…夢って、何ですか、坊ちゃま!!隠し事はいけませんよ!!」
「・ ・ ・。」
今日は起きてからが悪夢だったのかもしれない、ふっと考えてしまう主人だった。
事情を説明すると、衣笠は肩の高さまで小さな挙手をする。…面倒だったが、紅貴は指名してやる。
「…はい、衣笠さん。」
「あのぉ、その夢ってどう考えても現実の話なんじゃないの??」
11歳のオレと同じ発想をするなぁ、と思いつつ、紅貴は相手を見つめ返す。
「…子供の頃のオレもそう思ったんだよ。でも、源に訊いたら違うって…。」
衣笠はますます不思議そうな表情をした。
「漆君が嘘をついているんじゃないですか??」
「…なんで??」
その発想はなかったな、と思いつつ、納得するのも癪なので言い返す意地っ張りな主人だった。衣笠は、え~と気だるげに叫んでから答える。
「そんなの知りませんよ~。…直接、漆君に訊いたらどうです??」
「だから、はぐらかされるんだって…。」
ぼやきつつも、紅貴は考えてみる。
…夢に出てくる真夜中の部屋に入ってくる人影が、自分の執事だとしたら。確かに整合性がある。…というか、違和感がまるでない。
問題は、漆がそのことを嘘までついて隠していたことにある、と次期当主は静かに考えを進める。
そういえば、と思い当たる。…夢の中の人影は、最後に何か喋っている。だが、紅貴は朝起きるとその台詞を全て忘れてしまうのだ。
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