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「なっ、何でわかるんだよ…。」
紅貴が思い出していたのは、デート襲撃された後の車の一件である。細工をされた車を見るといって、漆は主人と共に帰ろうとはしなかった。
『ふぅん、やっぱりな。他に、主人を避けようとしている動きはなかったか??…よく考えろよ、本当になかったかどうか。』
「そんなはずが…っ」
ない、と言いかけて、紅貴が思い起こしたのは自分の担当に戻れと執事に命じた時だった。漆は喜んでいないのは明らかだったし、衝撃を受けていたように思う。
『…担当を戻す、ですか??』
『…嬉しくねぇの??』
『いッ、いえ…。突然の報告でしたので。』
そういえば、と連想ゲームのように紅貴は思い出す。担当を外したにも関わらず、婚約する日、漆は元主人相手に鮮やかな笑顔を見せていた。
『…おはようございます。』
紅貴は頭を掻き毟りたい衝動に駆られる。
「もしかして…、オレって実は源に本気で嫌われ…。」
紅貴に皆まで言わせず、遮ったのは電話相手の貝沢だった。
『あ~、違う違う。そりゃ、純粋にお前の婚約を後押ししたかったんじゃねぇの??』
執事なら当然の感情だろ、と言葉を付け足す貝沢に、紅貴の頭はついていけない。
「…当然の、感情なのか??」
『そうそう。まず、最初のベッド押し倒し事件な。これは想像でしかないんだけど、お前と源さんって相当仲いいんじゃないの??』
「まあ…。一緒に育ってきた仲だし、多少は…。」
ならさ、と貝沢は言い募る。
『これから許嫁と仲良くするべきだし、ちょっと距離を置こうとしたんじゃねぇの??…押し倒しはまあ流石にやり過ぎだとは思うけど。お前の許嫁だって、めちゃくちゃ入る隙間なさそうな主従見たら、完璧引くだろうし。』
「距離をとって…婚約するオレを応援しようとした…。」
呟いてみると、確かに納得できる部分が多々ある。
担当を外したにも関わらず晴れ晴れしていたのは、自分と距離を置くのに成功したからだ。戻すと命じたのは婚約破棄された後だが、燈だって谷ヶ崎のαの血統を一度失敗したくらいで潰えさせようとはしないだろう。また新たな許嫁が選ばれるに違いない。その時のためにも、主人とまだ距離をとっておきたかったと考えるとすんなり腑に落ちる。
また、婚約を後押ししていたのではないか、と言われると否定は出来ない。何かにつけ、遠瀬院を気遣うよう先に示したのは漆だった。デート後、謝罪の薔薇を贈った理由も頷けるというものだ。更に挙げれば、婚約破棄が決定した後に本気で泣いたのも、漆自身が主人と令嬢との婚約に期待していたからだろう。
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