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そもそも、オレにアイツのお見合いを止める権限なんて何もねぇしッ、と一声叫んで、気が済んだ紅貴は自室の扉に手をかけ、廊下へと出た。
廊下に出ると、であい頭にメイドとぶつかりそうになった。よく見てみると、ドジな性格の東だ。…何やら、何十枚と積み上げられたDVDが入ったカバーを抱えている。天高く積み上げられたDVDは到底人の制御できるものではなく、ぐわんぐわんと心もとなそうに時折左右に揺れていた。…見るからに危ない運び方だ。
「あ…っ、坊ちゃま!!どうかしました??部屋で何か仰っているのが聞こえてきましたが。」
「…いや、別に。」
普段ならば、そのDVDの荷物は危ないと東に言って、半分持つとか自室に一部を置くよう提案をするところなのだが、残念ながら今の紅貴には余裕がなかった。
その代わりではないが、紅貴は東の隣に並んで二人して歩き出す。東の持つDVDカバーの荷物は右に揺れ左に傾きするが、紅貴は危険だと判断できるほどのゆとりはない。
「…東さんさぁ、オレは大切な人に何が出来ると思う??」
普段なら使用人に絶対しないような質問が、紅貴の口をついて出た。紅貴は続ける。
「オレ、壊すくらいしか出来ないんだよ。大事な奴…一人も守れなくって。」
「はあ…。」
東はどう考えてもレッドカードのDVDの荷物を左右の手で抱えている。荷物に右へ左へと操られてよろけつつも、紅貴の問いかけは律儀に聞いていた。
「坊ちゃま、元気を出して下さい!!」
「いや、励ましは今いいんだって…。それより…。」
紅貴の台詞にかぶせるかの如く東が宣言する。
「私はドジです!!」
「・ ・ ・。」
いきなり大声で自虐発言をするメイドに、流石の紅貴も相談相手を間違えたかと目を瞠った。
「…でも、ある人に言われました。『君はドジだけど、その分周りの人を笑顔にする才能があるね』って。」
ぐらわんぐらわんと荷物に引っ張られながら、それでもドジメイドは語り続ける。
「私、それまでずっとドジな自分が嫌いでした。でも、その人の言葉に救われました。」
だから…、とメイドは紅貴を見て、にっこりと微笑んでみせた。
「きっと、坊ちゃまの壊す力にもそういういいところが絶対あるんですよ!!」
それにほら、とメイドは根気強く荷物と付き合いながら紅貴に告げる。
「破壊の後は、再生があるってよく言うじゃないですか!!」
メイドがそこまで言い終えた、瞬間だった。東の身体が突如前につんのめったかと思うと、派手に転んだ。盛大な音をたてて、床に転がるDVD達。東はすぐさま身を起こしたが、床の惨状を目撃すると閉口した。
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