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幼馴染からの招待状
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仕事帰りの俺は、フラフラの足を何とか動かして家の前に着いた。
そして習慣的に、ポストの中を覗き込む。
何も届いていないと分かってはいても、ついつい気になってしまうのだ。
まぁ、あったとしても振込用紙か広告用紙だろうが・・・
しかし今日に至っては、俺の予想は外れたようだ。
「手紙なんて・・・今どき珍しいな」
スカスカなポストの中に一枚の手紙。
メールやSNSでのやり取りが主流となっている今では、手紙を書くこと自体少なくなっている。
同窓会や結婚式の招待状でさえ、メールで送られてくるのだから。
そんな世の中になった今、わざわざ手紙なんかを送って来るとは一体誰が・・・
少し不審に思いながら取り出してみると、普通の手紙にしてはかなり洒落た封筒が出てきた。
しかも活字で【西本 和樹様】と俺の名前が書かれている。
その上には小さく、どこかの高級ホテルらしい住所も載っており、俺はなんとなく嫌な予感がした。
・・・これはもしや、結婚式の招待状では・・・
三十路に近付くにつれ、周りの友人達は次々と結婚ダッシュ、ゴールインを決めていった。
時には友人代表のスピーチをしたり、場を盛り上げるために体を張った出し物をしたものだ。
「さてさて、今回は誰がめでたく結婚するんだ?」
頭に浮かぶメンバーは大分絞られてきた。
俺はなんの気なしに、手紙・・・ではなく招待状の裏をめくってみた。
「え・・・・・・」
裏に書かれている名前を見た瞬間、俺の思考は一気に弾け飛んだ。
身体中の神経がこの一通の紙切れに集中する。
自分が今何処にいるのか、どうやって立っているのかさえ分からなくなるくらいに。
【大森 雅人】【安藤 知恵】
これは間違いなく結婚式の招待状であり、その裏に書かれている名前はその新郎新婦に違いなかった。
「大森 雅人・・・・・・」
ようやく絞り出して出た声はあまりに弱々しく、自分でもよく聞き取れなかった。
けれどこの名前は、俺の人生においてあまりにも大きすぎる存在であった。
「そうか、お前もついに結婚するんだな・・・・・・」
いや、むしろ遅すぎやしないか?
だって、あの大森 雅人ともあろう人が・・・・・・
「数年ぶりに寄越した連絡が、コレかよ・・・」
いつからコイツとは疎遠になったのか・・・
それを数える気力すら沸かず、俺はその場で下唇を強くかみ締めた。
そうでもしないと、衝動的にこの招待状を握りつぶしてしまいそうで・・・怖かった。
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