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父の愛
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鈴木財閥の当主である父に引き取られて、数日。深夜、誰もが寝静まった頃。僕は、使用人に呼び出され、父の寝室へ案内された。こんな夜中に、と不審に感じたが、父は忙しい人なのだからと自分に言い聞かせた。
「家は、慣れたかい?」
僕は小さく首を横に振った。
「夜ご飯はすましたかい?」
「はい、ご兄弟の方と一緒に」
ただ、食事が喉を通らなかった。
この家は大き過ぎる。大きさだけでなく、抱えているものが。
身の丈に合わない気がしていた。
僕の母とは別に、この家には正妻がいる。そして僕と歳の近い、大切な跡取りが。そんな方々と肩を並べていることを快く思わない人間もいる。
今まで喧嘩で罵られたことはあっても、存在を否定されたことはなかった。
「長男の明(あきら)は、なかなか気が効くだろう。暫くはあれにきみの面倒を見させよう」
「いえ、僕は大丈夫です」
わざわざ手を煩わせなくてもと断りを入れたが、父は長男に任せるつもりなのだろう。
と、突然部屋に緊張が走る。
「菊子は、透き通るように綺麗な目をしていた」
今までの会話に区切りを入れた父は、僕の頬にそっと手を伸ばす。突然の出来事に、
びくっと身体を強張らせる。嫌な予感がする。
けれど、まさか父が自分の息子に手を出すはずがない、疑いすぎだ、と自分に言い聞かせた。
「流石菊子の子だね。そっくりに育って」
「お父様…っ」
そっと触れる手を動かして、僕の耳をさする父。僕を見る父の目には、僕の母が映っていた。母はよく夜に居なくなり、朝になって帰ってきた。帰ってきた母の手には決まって、花や服といったプレゼントがあったので、父と会っていたのだなと、僕は察していた。父は相当母に入れ込んでいたらしい。
「君も菊子に似て線が細いんだね。吸い込まれてしまいそうだよ」
「三好(みよし)、手伝いなさい」
「承知いたしました、ご主人様」
父は、扉の側で待機していた使用人を呼んだ。これから何が起こるか、僕がどうするべきなのか、知らないわけではない。純粋無垢なままではない。
「小枝様、失礼致します」
若くて父より力のある使用人の三好が、僕を持ち上げて、ベッドへエスコートする。
無感情な使用人、母の影を僕に投影する父。
この手を拒めば、ここでの居場所は無くなってしまうことは目に見えていた。
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