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海8
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ぺちぺちと顔が叩かれる。その小さな手によって起こされたジュードはノアをぎゅっと抱きしめた。
眠い…
「おにいたん!」
起きてとジュードの体を揺らすノアは昨日のことをキレイさっぱり忘れているよう。
ふにゅっと頬がくっつくと、ぱっちりと目が覚めた。このもちもちな頬がたまらない。
「おはよう」
「おはようごじゃいましゅ」
頬と頬をすりすりさせて、朝の挨拶をすると、ノアを抱っこしたまま、洗面所へ移動する。ノアの歯磨きチェックから、ノアのおむつチェック、全てを行うと、満足した顔でセバスチャンを呼ぶ。
「おはようございます。」
「「おはよう」ごじゃいましゅ!」
ダイニングへ行くと、すでに両親達は席に着いていた。ノアの隣の席に座ると、手を合わせてお祈りをする。
「味噌汁だ…」
「ジュード様が昨夜、飲みたいと仰っていたので…」
朝から味噌汁しかもカニが入っているとは贅沢だ。ほっこりとしつつ、日本人であった頃を思い出す。
「おいちい!かに!!」
「他にも魚やエビからも出汁が出る。エビといえば、エビフライを作ってないな…」
「えびふらい?」
「サクサクした食べ物だ」
「あら、それは美味しそう!昼食にでも作れるかしら?」
「はい。
エビの他にイカや魚もありますし、タルタルソースをつけてもいいですね…
料理長!卵と酢、油、玉ねぎ、塩コショウ、野菜の酢漬けを用意できたらしておいてくれ。
フライにはパン、卵、小麦粉を使う。」
「かしこまりました。」
朝食が終わると、ノアと朝の勉強をする。食休みということで、これが日課となりつつある。勉強といっても絵本を読むだけだが…
「おひましゃまは、ちあわしぇ?じゃあ、まおうはしゃま?」
「魔王は幸せではないかもな」
「うう…まおうしゃまも ちあわしぇ(幸せ)になってほちい。じゃあ、ぼくが まおうしゃま を、たしゅける!」
「そうか。ではノアは強くならないとな。それと、助ける時はお兄ちゃんにも相談するように。」
「あい!」
悪役も幸せになって欲しいよな。
ノアは助けると言っていたが、その助ける相手が悪役令嬢だと破滅の道へと進んでしまう。心の優しい天使が惑わされないように、俺がしっかり見守らなければ。
物語の主人公には悪役は勝てないのだから。
──────────…
スーーーー
大きく膨らむ巨大なものに、ノアが「わぁ!」とジャンプをする。得体の知れないものに使用人達は引き気味である。
「ジュード様、一体何を…」
「巨大ウォータースライダーだ。」
魔法って便利だな…簡単に空気が入る。
「大荷物を持っているとは思っていたが、こんなものを作っていたとは…」
「空気で膨らむのでふわふわですし、小さくなるので運ぶのに便利ですよね」
「発想が凄すぎて…」
ノアが落ちないようにお尻を支えながら、滑り台の階段を登っていく。2人乗りの滑り台用の浮き輪に乗ると、ノアが「こわい…」と言う。
滑り台はかなりの高さだ、俺も少しだけ怖い。
「俺が一緒にいるから大丈夫」
ノア用の小さい滑り台を用意すべきだったな…
「できるか?」
「あい…できましゅ!」
手すりから手を離すと、浮き輪がすべりはじめる。
「きゃぁぁぁ!!」
ノアの悲鳴が響き、右へ左へとクネクネと滑る。
バシャン!
着地点が海のため、水しぶきが顔にかかった。濡れた顔を手で拭きながら、ノアはキラキラとした目で俺を見つめる。
「たのちい!おにいたん もっとすべゆ!」
先程の恐怖はどこへ行ったのか、ノアは滑り台にハマった。
「…楽しそうね」
「大人もできますよ」
ノアの楽しそうな様子に、両親や使用人達も遊び始める。
「これは……」
巨大な何かができた噂を聞いて近くに住んでいる平民達も集まり始めた。
「すげー!!!大っきい!!!!」
群がる人に、キラキラとした視線が刺さる。
「ジュード様…どういたしますか?」
「きちんと並ぶのなら遊んでも良いぞ」
巨大ウォータースライダーは長蛇の列ができるほど人気が出た。
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