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新人期間も終わり、少しダイチも待機所で過ごす時間が出来た。
金にはなるが立て続けで客がつくと、最近はもう体がきつい為、楽でもあった。
ダイチは誰かが置いていったファッション雑誌を肩肘をついて何気なく読んでいた。
不意に待機所のドアが開いた。
ユウが出勤し、待機所に入ってきた。
この日はどうも電話の鳴りも悪く、出勤するボーイも少なかった。
買われたい為にダイチ以外のボーイは酒が飲めるカウンターの裏に立っていて、ダイチは1人だった。
ロッカーにユウは荷物を入れ、ユウはダイチとはテーブルを挟み、間隔を空けて座った。
ユウは2人きりの空間を紛らわすようにすぐにスマホを開く。
「暇みたいよ、今日」
雑誌を捲りながらダイチが空気を割った。
「そ、そう」
ラブホテルで一夜を共にしてから久しぶりの2人だった。
ダイチは立ち上がると自分のロッカーを開けるとバッグの中から一枚のチケットをユウに差し出した。
「...来月、ライブあるから良かったら見に来いよ」
「...」
躊躇いがちにユウはチケットを受け取ると、ロッカーを開けて、財布を取り出した。
チケットの代金を手渡そうとしたら、
「いいよ、やる」
「そんなわけ...」
「いいから、しまって。金」
ダイチはユウを見ようとはしない。
渋々、ユウは金を財布に直し、ロッカーを閉めた。
「トリだから、俺ら。時間の余裕はあるよ」
「へ、へえ、凄いじゃん」
自分が抜けて、トリになるなんて、やっぱり自分は抜けて正解だったんだ、とユウは理解した。
「土曜日か、空けておく」
チケットを見たままユウが言う。
「ユウ」
「なに」
ダイチはユウに近づくと顎を持ち上げてキスをした。
「な、人来る...」
「みんなカウンターだよ」
「で、でも、誰か出勤してきたら...」
再度、ダイチが口付けをした。
ユウの力が抜けた。自然とダイチの舌を絡めとる。
深い口付けをした後、ダイチはユウを抱き締めた。ユウもダイチを抱き締める。
言葉は無かった。寧ろ、要らなかった。
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