アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
選択
-
そんなことをしていればオレンジ色の夕陽が部屋を照らしていた。
そしてふと、中学の頃に先生が話してくれた事が頭を過ぎる。
夕陽の綺麗なあの日、保健室で言われた
運命の番に愛される幸せ…
あの時、先生は言っていた。
死んでしまいたいと絶望的な俺に、幸せそうに笑って指輪を光らせ、教えてくれたのだ。
本当にそんな物が存在するのだろうか。
こんな、俺にも…?
本当に、そんな奇跡があるのなら微かな希望でも賭けてみたい。
もう一度神崎さんの番号を打ち込むと震える手のまま、通話ボタンをタップした。
呼び出し音が3回なった頃、繋がった。
『もしもし』
「っ……」
体が震えて、声が出なくて、代わりに涙が流れる。
これじゃ、いたずら電話になってしまうと声を出そうとしても出てこない。
俺は強いはずなのに。一人でも大丈夫なはずなのに。
どうしてしまったんだろう。
番に出会うと弱くなってしまったりもするのだろうか?
『…夏目くんかな?』
「っは、ぃ…っ」
なんとか絞り出した声で返事をすると、神崎さんがクスッと笑った声が聞こえる。
『電話してくれて、ありがとう。きっと色々考えて電話をくれたんだろう』
神崎さんには全部見透かされている気がして少し怖くなってしまう。
神崎さんもアルファかもしれない。
ヒート中は煉の匂いを求めすぎてあの時のことはあまり思い出せないけど。
『もう体調は落ち着いた頃かな?』
「もう全然っ、大、丈夫です…!」
泣いているせいで鼻声なのが恥ずかしい。
神崎さんは、よかったと一言だけ言って泣いてることには触れないでいてくれて情けないながらもその優しさに救われた。
『夏目くんと会ってから、煉はずっと君の話ばかりしていてね、やっぱり本能でわかるのかもしれないね。運命の番だというのが』
俺の、話ってどんな話なんだろう…。
気持ち悪いとかそんな風に思われていたりするだろうか。
初対面でヒート起こすようなオメガ相手なんだから、気持ち悪いと思われても仕方ないけど。
そう思ったら胸が締め付けられるように痛くて、やっぱり電話をするべきじゃなかったと後悔した。
『…それでね、夏目くん。君たちが惹かれるのは当然のことだから煉が精通して君が番だと気付くのも時間の問題だと思うんだ。運命の番が近くにいると、逃すまいという本能から本来来るべき時よりも早く精通して番を自分のものにしようとするからね』
「神崎、さん…俺、やっぱり離れますっ…!息子さんの為にも、自分の為にも近くにいない方がいいと思うから…」
大丈夫、バース検査でオメガだとわかってからずっと俺は1人でやってきた。
問題なく、やってこられたんだから。
ヒートが来ただけ、ただそれしか変わったことはないんだから。
運命の番なんていなかったんだと自分に言い聞かせればいいのだ。
.
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 35