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まだ知らぬ想い7
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「キョウヤ様も、グランデル王陛下とお付き合いされていたら判るかと思いますが、国王陛下というのは、とても難しい立場の方です。愛する人を幸せにするために婚姻を結ぶ方もいれば、愛する人を幸せにするために婚姻を結ばない方もいらっしゃるでしょう。……民か王妃か、という選択を迫られた際に、国王は迷いなく王妃を捨てなければなりませんから」
愛情とは人により様々な形で示されるものなのだ、と言う王妃に、少年は生まれて初めてその事実を知った。これまで、愛情のなんたるかを少年に教えてくれる人などいなかったのだ。
ならば、この国の国王と王妃の関係も、またひとつの愛情の形なのだろう。国王はすべての王妃を幸せにするために、すべての王妃を一番に愛する。そして、王妃はそれをこそ幸福だと思う。きっとそこには、少年のような部外者には到底理解できないようなものがあるのだ。けれど、
(…………やっぱり、僕は、)
もし、あの王が、自分を呼ぶ時の声で誰かを呼んだなら。愛している、と囁いたなら。
(……それは、いやだ)
何故そう思うのかは判らない。だが、確かにそれを好ましいと思わない自分がいるのだ。あの声が誰かの名を呼ぶのなら、それは自分が良い。
黙って目を伏せた少年に、アメリアが優しい眼差しを向ける。少年がそれを見ることはなかったが、迷子を導くような、それでいて何故か僅かな悲しみを滲ませた目だ。
何度か躊躇うように口を開いては閉じたアメリアが、意を決して少年の名を呼ぶ。
「キョウヤ様、実は、貴方に隠していたことがあります」
「隠していたこと、ですか……?」
「はい。貴方にとって、とても大切なことです。この国に馴染むまでは、キョウヤ様の心の平穏のために黙っておこうということになっていたのですが、今の貴方を見たら、これ以上隠してはおけません」
そう言ったアメリアが、真剣な目を少年に向け、静かに言葉を落とした。
「ギルディスティアフォンガルド王陛下の未来視により、グランデル王陛下の命が危ないことが判りました。詳しい話は、応接室でお待ちのクラリオ様から聞いてください。貴方から訊かれたらお答えするよう、話は通してあります」
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