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深淵4
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幸いなことに、女官はウロを部屋に入れてすぐに立ち去ったため、今は部屋にウロ一人だけである。ならば、周りに人がいては出さないような顔を出す可能性がある。
そう思った王だったが、部屋に入ってからのウロは、退屈そうに部屋に置いてある調度品を弄ってみたり、ベッドに転がってみたりと意味のない行動ばかりで、一向に何かをする気配がない。
暫くその様子を見ていた銀の王だったが、有意義な情報の入手が見込めないと判断した時点で、この傍観に区切りをつけることにした。
この時間軸でこれ以上の情報が望めそうにないのならば、時間軸を移動すれば良い。さしずめ、“ウロが円卓の国々を害そうと思い至った時間軸への移動”あたりが妥当だろうか。
(時間軸の移動はそれだけで魔力の消費が著しいが、致し方あるまい)
一回の過去視でそう何度もできることではないが、少なくとも一度くらいの移動ならば問題なく行える。そう考えた王が、再び詠唱を始めた、その時、
「あー、そこで僕自身の過去を覗こうとしちゃうワケかー。それはちょーっと、容認できないなぁ」
ウロが、“王を見て”喋った。
「っ!?」
予想外の事態に、王が息を呑む。
それは有り得ないことだった。何故なら、これは飽くまでも過去を幻として投影したにすぎず、実際に過去を遡ってその場に王が存在している訳ではないからだ。故に、王が誰かに認識されることなど有り得ない。
だが、ウロの目は確かに銀の王を見ており、その言葉は王に向かって発せられたものだった。
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