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王の不在12
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グランデル王国は他と比べると著しく火山地帯が多い国だが、海が近いこの辺りでは土地が比較的平坦になり、国を覆っている火の加護がやや薄くなる。そのため、海岸に近い場所に構えられた居住区はほとんど存在しない。水の加護が強い青の国とは違い、赤の国では水に嫌われる人が多く、これといった漁業が発展していないのもその理由のひとつだろう。
故に、海岸部の国民を避難させることはそこまで難しいことではない筈だ。暗くて見にくくはあるが、視認できる範囲に人や灯りが見当たらないことから察するに、少なくとも海沿いから離れた場所まで逃れることはできたのだろう。
「さすがはグランデルの騎士団といったところでしょうか。仕事が早いですね」
そう言ったグレイが、ちらりと周囲の空を見る。
「道中で渡り鳥に遭遇しなかったのは、……ライガの仕業ですね?」
「ああ、ライデンは感知能力に長けた幻獣だからな。一番安全で、かつ最短になるルートを選んで貰った」
そう言ってライデンの首を撫でたレクシリアに、グレイはなるほどと頷いた。
「しかし、後続はどうするんです? さすがの妹君も見えないところまで引き離されているようですし、残りの団員たちなどもっと後ろでしょう。途中で魔導陣付きの鳥に遭遇してもおかしくはないと思いますが」
「ああ、それも問題ない。ライガが通った後に微弱な雷信号を残して貰ってるんだ。人間には判らないだろうが、獣ならそれを辿って来られる筈だ。まあ、時間差がある分、確実に安全だとは言えねぇがな」
「……ライガに任せきりなあたり、徹底的に魔力を温存してますね、アナタ」
「なるべく温存しとかねぇと、死ぬかもしれねぇだろ」
さらりと言われた言葉に、グレイがやや顔を顰める。だが彼が何かを言う前に、ライデンが一気に下降を始めた。そして、前を見つめるレクシリアが口を開く。
「着いたぞ」
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