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目覚め10
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ぞわりと刺すようなその気配に、デイガーはおろか、離れた場所にいたアグルムさえも、僅かに少年の方へと気を取られた。
瞬間、後ろへと身体を引いたデイガーの頬を、鋭い切っ先が掠めた。
デイガーが咄嗟に回避行動を取ることができたのは、彼自身の能力によるものではない。より野生の本能を持っているデイガーの使役魔が、彼の身体を後ろへと引いたのだ。
頬に走った一筋の痛みに目を見開いたデイガーの視界の中で、少年がデイガーの方へと向かって地面を蹴るのが見えた。
「ッ!」
咄嗟に、デイガーは空間魔導を発動させて己の身体を上空へと転移させた。ほとんど防衛本能のようなものだった。
「な、なんだ今のは! これもエインストラの力だと言うのか!?」
竜の背に乗ったデイガーが地上に目をやれば、先程まで彼がいた場所には、刺青用の長い針を握った少年が立っていた。そしてその視線が、ついと上空にいるデイガーに向かって投げられる。
凍り切った、獣のような目だ。先程までの少年とは明確に異なるそれは、まるで個が切り替わったかのような違和感を与える。
デイガーを睨んだ少年は、しかし次にその視線を巨大な魔物へと投げた。そしてそのまま、その足が再び大地を蹴る。
真っ直ぐに魔物へと向かっていった少年に驚いたのは、アグルムだった。慌てて魔物と少年との間に入るように身体を移動させた彼は、しかし少年の握る針の先が今度は自分に向かっていることに気づき、寸でのところでそれを曲刀で受け流した。その拍子に体勢が崩れたところに、少年の蹴りが飛ぶ。さすがのアグルムも、それを避けることはできなかった。
「っ!」
まともに蹴りを喰らって息を詰めたアグルムの身体が、僅かに宙に浮いてから地面に転がる。大して鍛えられてもいないだろう少年の身体の何処にこれほどの力があるのか、アグルムには想像もつかなかった。
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