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目覚め14
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ようやく一体を仕留めたことで僅かに気を緩めたアグルムは、しかしすぐさま耳に飛び込んで来た咆哮に、再び刀を構える。
一体が倒されたことで、残りの一体がより一層にその怒りを膨らませたのだろうか。それは判らないが、先程までよりも明らかに興奮した様子の魔物は、アグルム目掛けて強烈な蹴りを繰り出してきた。それをなんとか躱したアグルムが反撃に出ようと刀を振り被ったところで、ふと彼は視界の端を何かが移動したことに気づいた。思わずそちらへと目をやれば、視界を掠めたのは少年へと向かう黒い影だった。その発生源は、空にいるデイガーの使い魔である。
(っ、一体がやられたことで、傍観をやめてアマガヤキョウヤを狙いに来たか!)
竜の一部が変化して伸びているあの影は、恐らく少年を捉えようとしているのだろう。
止むことのない魔物の猛攻を紙一重で凌ぎながら、アグルムは少年を見た。再び『迅』が現れて対処してくれることを期待しての行動だったが、少年に先ほどのような変異の兆しは見られない。人格の入れ替えというものは、そう頻繁に引き起こせる事象ではないのかもしれないとアグルムは思った。
トカゲの様子から察するに、頼みの彼の炎も、先程アグルムに力を貸した分が最後のようだ。少年を守るように立ち塞がってはいるが、あの小さな身体ではどうすることもできないだろう。
そんな極限状況に立たされたアグルムが迷いを見せたのは、一瞬だった。
「っくそ!」
魔物に背を向けたアグルムが、少年の方へと走り出す。足を止めないまま曲刀を振りかぶったアグルムは、少年に向かう影目掛けてそれを投げた。空を切って飛んだ刃は狙い通りに突き刺さり、影を地面に縫い留める。その隙に、アグルムは少年の腕を引っ掴んで自分の方へと抱き寄せた。
だが、そこまでだった。
「天下の円卓の武人が必死に戦っている様、いやはや楽しませて頂きました。しかし、魔法が使えないだけで、こうも無様なものなのですねぇ」
すぐ背後から聞こえて来たデイガーの声に、アグルムが振り返る。その眼前に、細身の剣が突き付けられた。
「けれどもう、飽きてしまいました。そろそろ貴方を殺してエインストラを頂くとしましょう」
そう言って微笑んだデイガーが、剣を振り上げる。
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