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アグルム・ブランツェ2
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「あらぁ、それを見越して計画を立てるのが、貴方の仕事だったのではなくて? 隠密行動のプロが、聞いて呆れるわぁ」
小馬鹿にしたような薄紅の王に、黒の王が少しだけむっとした顔をする。
「俺だってこの王様が無駄に目立つことは知ってたから、かなり早めに出発したりとか、事前に隠れ方をちゃんと教えたりとか、色々やったよ。でも、俺の想定を超えて駄目駄目だったんだよこの王様。あれだけ教えたのに、隠れるのが致命的に下手すぎ。ちょっと目を離すとすぐに見つかりそうになってるから、こっちは終始ヒヤヒヤしっぱなしだし。きっと赤ん坊だってもっとうまく隠れるよ」
「いや、それはさすがに私のことを貶めすぎなのでは……」
控えめにそう言った赤の王だったが、黒の王に睨まれてわざとらしく身を小さくした。
「気配を消せって言ってるだけなのに、なんでできないの? こんなの初歩の初歩だよ? 誰も存在を消せとは言ってないんだよ?」
「それは何度も聞いたのだが、そもそも気配を消すことが難しいのだ。貴殿は初歩だと言うが、とんでもない。それ自体が手練れの為せる業ではないか」
「手練れは気配じゃなくて存在を消すって言ってんじゃん。何度言ったら覚えんの?」
「だからな、まずもって“存在を消す”という言葉の意味が全く理解できんと、私も何度も言っていると思うのだが」
真顔で言った赤の王を、黒の王がまじまじと見る。
「……あんた、やっぱ物凄く馬鹿なんじゃない?」
失礼極まりない物言いに、赤の王が少しだけ眉を顰めてみせる。
「言わせて貰うが、貴殿のその発言を理解できる者の方が少ないと私は思うぞ。生きとし生けるものというのは、皆そこに存在しているものなのだ。それこそ、生き物の枠から多少外れている概念上の存在とて、存在しているからこそ存在しているのだろうに。……いかん、私まで何を言っているのか判らなくなってきたぞ」
「あんた説明下手だね。何言ってるのか全然判んない」
「貴殿には言われたくない」
きっぱりとそう言った赤の王だったが、黒の王は気にしていない様子だった。
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