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炎に焦がれる12
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焦ったような困ったような声が、聞こえる気がする。
そう思った少年は、重い瞼をゆるゆると押し上げた。ぼやけた像をなんとか結べば、心配そうな顔で自分を見下ろしている男に見覚えがある。他でもない、リィンスタット国王のクラリオだ。
「……り、んすたっとおう、へいか……?」
「良かった! 目覚めたんだな! こんな獣舎で転がってるから、めちゃくちゃ心配したんだぞ! ロステアール王はロステアール王でアグルムから戻っちまってるし、一体何があったんだ?」
「え、と……?」
混乱している様子の少年に、黄の王は取り敢えずといった風に少年の隣を指さした。示された方へ顔を向ければ、そこには赤の王が倒れている。どうやら意識を失っているらしい彼を見て、少年の顔がさっと青ざめた。
「あ、あなた!?」
慌てて起き上がろうとした少年は、しかし身体を起こした途端に襲ってきた眩暈に、再び地面に倒れ込みそうになった。そんな彼を咄嗟に支えた黄の王が、落ち着けと声を掛ける。
「ロステアール王なら無事だ。完全に意識飛んでるみてーだけどな。いやぁ、この王様が意識失くすなんて初めて見たぜ。マジで何してたんだお前ら」
「え、えっと、あの、その、帝国が、あ、精霊がいなくて、空間魔導と、アグルムさんが、」
「お、おう。取り敢えず何言ってんだか判んねーから落ち着け。というか多分、ひとまず休んだ方が良いな。うん」
「……すみま、せん……」
うなだれた少年に、黄の王が明るく笑う。
「いや、こっちこそいきなり色々聞いて悪かったな。まあでも、取り敢えず一個だけ教えてくれ。……そっちは片付いたってことで、良いんだよな?」
王の問いに、少年がこくりと頷く。
「よっしゃ。それが判っただけで良いわ。あ、こっちも全部片付いたから安心しろよ。一件落着ってやつだな」
にっと笑った黄の王を見て、少年も控えめに微笑みを浮かべた。
「ロステアール王とまとめて部屋に運んでやっから、もう寝てて良いぞ。その代わり、次に起きた時は色々聞かせて貰うからな」
そう言われ、少年は素直にその言葉に甘えることにした。何故だかは知らないが、それくらい疲労が溜まっていたのだ。
こうして、リィンスタット王国を震撼させた大事件は、ひとまず収束したのであった。
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