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終局1
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「なんにも覚えてないだぁ!?」
そこそこ広い部屋に、黄の王の声が響き渡る。
亜空間のような場所から少年と赤の王が戻ってきたその日の夜、ようやくまともに目覚めた二人は、夕食を済ませたところで黄の王に呼び出され、応接室へと来ていた。日中は休ませてやったんだから、そろそろ何があったのかを説明しろということらしい。その意見はもっともだし、黄の王には散々世話になっているのだ。自分にできることなら可能な範囲で何でもしよう、と少年は思っていた。だから、魔法が使えない謎の空間に飛ばされたことや、そこであったことについて、赤の王と二人で説明していたのだが、
「なーんで覚えてねぇんだよ! つい今朝がたのことだろーが!」
怒っているような呆れているようなクラリオの声が、再び部屋に響く。それに対し、赤の王はやや困ったような表情を浮かべてみせた。
「いや、それはその通りなのだが、こう、記憶が酷く不明瞭なのだ。アグルムだった間のことははっきりと覚えているのだが、アグルムから私に戻ったあとのことがいまいち判らん。デイガーを間違いなくこの手で殺したということは確かに記憶に残っている。いや、記憶にあるというよりも、それが間違いなく事実であることを知っている、という方が正しいのか……? とにかく、デイガーはもう死んだという扱いで良いのは確かだ。だが、どうやって奴を殺し、どうやってあの空間から戻ってきたのか、と問われると……」
「途端に判らなくなるって?」
黄の王の言葉に、赤の王が神妙な顔をして頷く。
「んな都合の良い話があってたまるか! つーかキョウヤもキョウヤだ! お前も覚えてねーのかよ!」
「も、申し訳ありません……。この人が、この人に戻ったことは、覚えてて……。……あ、あと、この人が、炎の魔法? で、あたりを燃やして……。……そのあとは、気づいたら騎獣舎に戻っていました……」
恐縮しきった顔でそう述べる少年を見た黄の王は、少年のストールから顔を覗かせているトカゲにも問うような視線を向けた。だが、トカゲも覚えていないのか答える気がないのか、こてり、こてり、と首を傾げられて終わる。
そんな二人と一匹の様子に、黄の王はガシガシと頭を掻きむしった。
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