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終局11
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そう言い残して出て行った黄の王に、少年が思わず赤の王の裾を弱く握る。それに気づいた王は、裾に触れる手を取ってそっと握った。
「あ、の……」
小さな声が、ぽつりと零れる。その先を言うべきかと迷いを見せた少年だったが、王はただ、黙って次の言葉を待っているようだった。
「……僕、もしかして、リィンスタット王陛下に、酷いことを言ってしまった、の、かな……」
別に、確証があった訳ではない。ただの漠然とした不安だ。アメリアが黄の王を愛していたように、黄の王もまた、心の底からアメリアを愛していたように思えたから。
黄の王に対して吐いた言葉を悔やむように俯いた少年の頭を、王が撫でる。
「酷いこと、ではないさ。お前の言葉も行動も、真っ当な人間の反応だ。そしてクラリオ王には、それを受け止める義務がある。それにもしお前が間違っていたなら、私が止めた。私が止めなかったのだから、そういうことだ」
その言葉で、少年は悟る。やはり、自分はあの王を酷く傷つけたのだ。
ならば、たとえ少年の反応が当然のものだったとしても、それはやはり間違いなのではないか。そう思い、それを口にした少年だったが、赤の王は首を横に振った。
「私たちは王だ。人という個である前に、王であらねばならない。だが、人の上に立つ者である以上、人でなくなって良い訳でもない。そして私たちが人であるためには、人として断罪される必要もあるのだ。だから私は止めなかった。クラリオ王が、お前の真っ当な疑問と悲しみと訴えで歩みを止めるような男ならば、王である資格はない。正当な断罪で折れるようなか弱い王は、必要ない」
なんて酷いことを言うのだろう。王は人だ。選ばれた人間が王という地位を与えられるのだから、人でしかない。それなのに、王という、人ではない化け物のような何かであることが求められ、それでいて化け物になり切ることも許されないだなんて。
ならば、王が持つ人としての感情はどこへ行くと言うのだ。どうしようもない悲嘆も、慟哭も、何一つ許されないと言うのか。
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