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仲直り(?)
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その日以降早くも安曇屋家には大きな亀裂が入った。
元々俺と泰陽の仲は最悪だったものの、それ以上になった。なんせあいつは兄弟でも家族でもない赤の他人だ!
兄ちゃんだからって耐えてきたけどもううんざり、あいつの事なんて知らねぇ!
朝練の日、いつも通り準備をしながら同級生と話をする。くだらない話が9割。
「ねぇ月希!獅戸とどーなのよ?仲良くやってる?」
「ほっとけ」
「おー怖、顔こわーい」
「いちねーん!悪ぃ!昨日の試合の荷物下ろしてきてくんね?」
「「「はい!」」」
先輩に頼まれ試合の荷物を降ろすべく、職員室に鍵を取りに行った。この学校では試合前日や試合後は練習や帰宅が優先のため駐車場にある倉庫に一旦荷物をいれる。その鍵も職員室で管理してるものなのだ。
そこでばったり弓道場の部室の鍵を取りに来た泰陽と鉢合わせる。
「……」
「……」
俺はすぐに目を逸らし職員室に入っていく。
まじ最悪!今日朝顔合わせずに来れたのにこんなとこで会うことになるなんて…さっさと鍵を回収してこの場から離れたい。
職員室を出ると、外で待っていた泰陽が俯いていた。
無視して横を通りすぎる。
「あ…ッ……」
泰陽は何か言いたげだったが別に俺がわざわざ聞いてやる必要は無い。てか話したくないし同じ空間にいたくない。
「……怖ァ!ねぇなにあの空気!」
「別に」
一緒に着いてきた同級生の部員が話しかけてくる。
「安曇屋あいつの兄弟なんじゃないの?!」
「違ぇ他人」
「えー……でも親の再婚でって先生言ってt」
「あんま首突っ込んでくんな」
「ッ、ごめん」
無性にイライラした。思い返すとさっきの泰陽は俺に対して恐怖の感情が混ざっていた気がする。昨日まであんなに俺をバカにして父ちゃんを舐めてたくせに、少し手荒に反抗しただけであんなんかよ…
その後も学校で会っても家に居ても一切会話をしないまま1週間、2週間と過ぎていく。それでもあいつの事は知らないし今まで通り世話してやるほど俺は優しくない。
いつの間にか話すことのないことの方が当たり前になっていた。
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「そういえば安曇屋」
「はい」
1ヶ月が経とうとした時日常会話のように先生と話していたら泰陽の話になっていく。
「獅戸…お前の義理の双子の弟とは仲良くしてるか?」
「……ぼちぼちッスね〜」
「そうか良かった、泰陽は顔に出にくいから分かりずらいんだよな!義理とはいえ兄弟は宝だからな!」
「……そッスね」
何が宝だ綺麗事並べやがって…あんなやつ兄弟でもなんでもないのに!これだから先生と言う人種は好きになれない。みんなと仲良くとか気を使えとか到底出来そうにない無理難題を生徒に押し付ける。まじなんなんだよ!
休日練習に行こうとすると部屋の前で泰陽が立っていた。スルーして通り過ぎようとすると行く手を手で塞がれた。泰陽を睨む。泰陽は少し怯えているが何か言いたそうに強い意志を目に宿していた。
「……どけよ」
「どきません」
「ざけんな、練習行くんだけど」
「話ぐらい聞けよ!」
泰陽が声を張る。少し裏がえり震える声が部屋を反響した。気迫に圧倒され反論できなかった。
「……その、……でした」
「は?」
「…………た」
「もう行くわ」
「だからすみませんでしたっつってんじゃん!」
ッ…嘘だろ?泰陽が俺に謝っ、た?!衝撃のあまり荷物を落とした。
「……君が、月希が享さんのこと慕ってて尊敬してるのは母さんから……」
「お、おう…」
「酷いこと言ってすみませんでした!」
キレ気味で謝られた。なんかおかしくなっちまって笑いが込み上げる。
「……ッ、プクッ、ンクククww」
「あ!ちょ笑わないでくれませんか?!///」
「いやwwwお前がそんな感情的になるとはww
声ひっくりがえってたしwwひーっしんどwww」
「あー!もう!
もう勝手に部活行けばいいじゃないですか!///」
泰陽は恥ずかしがって耳を触りながら自部屋に入っていく。わざわざ謝るために普段近寄りもしない俺の部屋に来て「月希」って呼んでくれた!照れてたし可愛いとこあんじゃん!
怒りなんてすっかり忘れて嬉しさに鼻歌を歌いながら学校に向かった。
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