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居酒屋の店員×失恋サラリーマン 恋の始まり
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(サシ飲み誘われちゃったよ、ヨッシャ!)
小さくガッツポーズを決めてると後ろから肩をポンっと叩かれる。
「ごめんごめん、遅れた」
困り眉で微笑みながら謝る部長。
優しそうなタレ目の目尻にしわがよる。
「全然待ってないですよ!行きましょう!」
「こういう話できる相手ってなかなかいないから助かってるよ」
最近、プロジェクトでペアを組んだ部長と残業が多くなっていた。
息抜きの雑談で、嬉しくも恋愛相談に乗ることになったのだが、どうやら相手は俺。
(しかも俺が部長のこと好きなの気づいてるっぽいし、これ絶対両片思いだぁぁぁ!!!)
彼は、入社当時から期待のエースで若くして部長に昇進、仕事が出来るハンサム。
離婚歴はあるもののまだ40手前だ。俺好みすぎる。
「ここ、ちょっと前に見つけて入りたかったんだよ、雰囲気いいだろう?」
部長と訪れた店は個室の小料理屋。と言っても酒の種類も多く、上品な居酒屋のようだ。
(これもしかして告白される流れか…???)
そう思うと緊張と嬉しさで心臓の動きがはやくなる。
「サエキ、今日口数少なくないか?顔も少し赤いし…」
「へぁ?!あ! あ、いや、大丈夫です!部長とサシ飲みなんで何話そうか考えちゃって」
頬を不意に撫でられ、思わず声が裏がえるが、頭をかきながら誤魔化すと部長は、なんだそれと笑った。
(笑った顔可愛すぎだろ…すき…!!)
席について飲み物と軽いつまみを頼むと、早速例の話題になる。
「アプローチはどうなんですか?仕掛けてます?」
「あぁ、昨日ご飯に誘ったんだよ、Sさんと2人きりで。OKもらってな」
「大進歩ですね!」
(今日のこれのことかあ〜、やばいニヤける)
Sさんとは部長の想い人のこと。
部長は気遣いのできる男だから名前を伏せているのだ。本人の前では伏せなくていいのに〜。
「そこでデートの、お誘いしようと思って…」
(少し顔赤くなってる…照れてんの最高じゃん…)
「うちの会社は休日がズレるの営業部くらいですし、日付の指定しやすいですもんね!」
(俺、来週の休み空いてますよ!)
「あぁ、緊張するなあ」
うなじを撫でながらソワソワする部長の様子に、ますます期待が増す。
「ちなみになんだが、デートの食事はイタリアンと和食だったらどっちがいいだろう。フランス料理のコースディナーでもいいかな」
(俺は和食だな…)
「やっぱり和食ですかねえ、落ち着いて話も出来ますし。部長とディナーならロマンチックでそれもいいですね!」
(言っちゃったぁぁ!!)
思わず興奮してしまう。
「失礼いたします。こちら、つくねともつ煮になります」
前髪の長い低めの声の男性店員(少し無愛想)が料理を運んでくる。
「ありがとう、御手洗はどちらですか?」
「ご案内いたします」
そのまま店員と席を離れる部長。
個室に1人になった途端、ニヤニヤが止まらなくなる。
(これはまずい、楽しすぎる…)
「あ!あれ、シイナさん!よく来るの?」
(ん?部長の声…知り合いかな)
個室の外で楽しそうな雑談を数分して部長が席に戻ってくる。どことなく嬉しそうである。
「お知り合いですか?」
「え?!あ、その…」
(なぜそんなにモジモジと……???)
「あの、その例の、Sさんはシイナさんなんだ」
「………え???」
(部長、耳まで赤い…)
シイナさんって…
え?お、俺は?????
いまいち状況が読めず固まってしまう。
「驚かせたかな、彼女は僕よりも10歳近く下だしね」
「…あ、あぁ!そ、そうだったんですね!…シイナさん…」
SってサエキじゃなくてシイナのSね…
ま、そりゃそうだよな、部長ノンケだもんな…
なにこれ、めっちゃ恥ず…
「シ、シイナさん確かに元気で一緒に仕事すること多かったです、もん、ねぇ…」
最近一緒に仕事することが多くなったのは何も俺だけじゃなかったんだ。
元気で笑顔が似合う子だよなんて言われて俺だと思った。髪は短いよで俺だと思った。シイナさんは女性らしいショートボブ。
何勘違いしてんだろ、ばかみてえ。
(やば、泣きそ)
「びっくりしたよ、まさか彼女もここに来てるなんて。さっき話して来週のご飯もここにしたんだ!デートプラン考えなきゃ…!あ、僕変な顔じゃない?」
興奮して早口になる部長。
可愛いけど、今の俺には酷すぎる。
「、全然大丈夫ですよ!い、つも通りのハンサムです、はは」
乾いた笑いしか出てこない。
その後、1,2時間くらい話したが内容はほとんど覚えてない。
「じゃあ、僕こっちだから!また相談頼むね」
「はい、ご馳走様でした。また会社で」
ご機嫌に帰っていく部長の後ろ姿に、胸がズキズキと痛む。
店の前でズルズルとしゃがみこんでしまう。
(俺、失恋したんだ…)
口と鼻を手で覆うようにして熱くなる目頭を押さえる。
ガラッ
「!、あの、」
後ろから心地いい低い声が降ってくる。
「具合悪いッスか?良かったら店の奥、空いてるんで…」
「あ、いや、大丈夫!すみません、店の前でしゃがみこんじゃって。帰ります」
(全然大丈夫じゃないけど)
さっきの店員が仕事を終えたようで店から出てきた。ささっと立ち上がって帰ろうと踏み出すが、腕を掴まれる。
「!、なに?」
「すみません、つらそうだったから、その…」
何を言い淀んでいるんだ…
離してくれ、今にも泣きそうなんだよ。
よく見たら俺よりも若そう、大学生か?
一瞬強く吹いた風に彼の前髪がふわりと上がる。
(うわ、タイプ)
「突然すみません、その、お客さんもゲイですよね、お連れの方のこと好きだった?失恋かなって…」
「よく見てんね」
バツが悪そうに、盗み聞きするつもりはなかったんです…と謝っているが。
(ん?待てよ、"も"って?)
「お客さん"も"って…」
「、! 良かったら連絡ください、」
食い気味に俺の掌にメモ紙を押し込んで走っていく。
「あ!ちょっと!」
メモ紙にはSNSのIDと「一目惚れです」の一言。
「…俺このSNSやってねえよ……」
首まで熱い…
帰りの電車でSNSアプリをダウンロードする。
少し胸が高鳴る。
「バカだなあ、俺。単純すぎだろ」
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