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人気者先生と美術男子 両思い 青春
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ガヤガヤする教室と廊下、HRを終えて着替える運動部、寄り道の相談をする軍団、青春の1ページだろう。
「さよーならー」
「はいさよなら」
「コーちゃんばいばーい」
「コーちゃんやめろー気をつけて帰れよー」
僕は小さく後ろから声をかける。
「先生」
「お、セキ、今日部活休みだろ?」
絶対気付くんだもんな、この人。
「先生がいいなら付き合ってもらおうと思って、」
「おぉ、好きだなあ俺のこと☆」
「はいはい、お願いします」
なんだよ冷たいなーと僕の背中をパシッと叩く先生。美術部員の僕は担任兼美術部副顧問である先生をモデルに作品を仕上げている。
先生はまだ若く生徒に近い目線に立ってくれて人気だ。「コーちゃん」という愛称で生徒からも先生方からも慕われている。
本当は僕なんかが独り占めできる人じゃない。
部活が休みの美術室、先生がミニテストの答案用紙に丸をつける音だけが響く。
絵の具を重ねる間に見上げると、夕陽に照らされる先生の横顔。
きれい。
男に向けて褒め言葉になるかわからないけど。
「セキ、見すぎ。筆動いてないぞ」
先生がこっちを見ていることに声をかけられて気付く。
「邪魔だった?視線」
「いいや?ただ、これ」
僕の目の前にピラピラとなびく10点中2点のミニテスト、用紙の上部には僕の名前。
「先生のことばっかり見てるから点数落ちてるぞ、ほかの教科は点数いいのに」
先生は口をとがらせて、他の生徒の答案にも丸をつけるべく体勢を戻す。
「先生」
「んー?」
「5問目、バツつけてたけど合ってるよ」
「え?」
「授業で僕の目を見て言ってたから合ってる」
まっすぐ見つめた。一瞬泳ぐ先生の目。
動揺してる。
「は、はは、そか、ほんとだ、ごめんごめん」
(意識しすぎ、先生も僕も)
しばらく経って、
どれどれどんなもんかなと僕の後ろに回って、まだ途中の絵を覗く。
「さすがだな、俺副顧問だけど絵はさっぱりだ」
「んふ…ははは」
「なんだよー」
「昨日の絵、ひどかった」
昨日、授業内容が生徒に伝わりにくく、絵で解説する場面があった。しかし、なぜ美術部の副顧問をしているのだろうかと疑問を持ってしまうほどに、絵心がない。
おかげで6限目のやる気低下した教室は一気に笑い声に満ちた。
恥ずかしそうに笑う先生が愛おしくてたまらなかった。
「難しいんだぞ、チョークで絵描くの、やってみろって」
「いいよ」
2人で美術室のほとんど使われない黒板に絵を描く。題材は適当。犬や猫や車、お互いの顔。
日が沈みかけて部屋が薄暗くなる。
笑いながら2人ともチョークまみれになって、
ふと顔が近づく、
視線がぶつかる、
思わず先生の筋張った長い指をそっと握る。
時が止まったかと、ゆっくりになったかと錯覚する。
美術室の目の前、昇降口で靴箱がカシャンと鳴って、ハッとする先生。握った手を離すしかなかった。離したくなかった。
「ぅ、うお〜い、すげえ青春っぽいなぁ、はは」
焦ってる?照れてる?暗くてよく見えない
「電気つけるか」
「んーん、帰るよ、ありがとうございます、付き合ってもらって」
「そか、んじゃ先生も職員室戻るわ」
片付けを終えて、教室を出ようとする。
僕は先生の肩を掴んで顔を手で引き寄せて
頬にキス
『お、まえ、なにやって、』
『先生がすき』
なんて出来たらいいのに。
「セキ、気をつけて帰れよ」
「はい、またお願いします」
「うん」
「ところであれいつ描き終わるの?」
昇降口で靴を履き替えて振り返る。
「先生が気付いたら、かな、」
「じゃあ卒業まで付き合うことになるな」
ずるいよ、先生、気付いてんじゃん。
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