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さらば岐阜
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本当はもっといたかったけれど、俺もルカもそんなに重役ではないので休みはそんなに取れない。よって、早く仕事に戻らなければいけないのだった。
鰻を食べた次の日、俺はホテルに籠って小説を直さなければならず、ルカは、忙しい俺を横目に、買ってやったばかりの果物ナイフを使って、割かしのんびりと果物のカットの練習をしたり、カットしたのを食べさせてくれたりした。
夜は、昼間の埋め合わせにいちゃいちゃしたりなんかして、手の大きさを比べ合ってみたりとか、足を絡めあってみたりとか、体がくっつくようなことばかりしていた。
温泉で洗われたルカの肌は、すんなりなめらかで、いつまでも触っていたくなる。服を脱がせて肩や胸にキスをすると、ルカはくすぐったそうに笑った。
そのうち、それだけじゃ物足りなくなって…
まぁ、その辺は割愛しよう、今回は。
とにかく、楽しい旅行だった。
たまに、なぜ俺は、いや、俺たちは、こうも食べ物の記憶に取りつかれているのかな、と思う。
いつか聞いたことがあるけれど、味覚は、人間の記憶の最初に刻み込まれて、最後まで残るらしい。
今回の旅行は、俺には、岐阜、そのものから命を頂いたような記憶として残るといい、と思う。
そうして、共に食事をして、言葉を交わしたルカのことも、死ぬまで記憶に残しておきたいんだ。
俺たちは多分、あまり家庭に恵まれてるわけじゃない。
だからこそ、お互いを想う気持ちが、異常に強いのだという気もする。
そして、二人とも、夢中になるものをお互い以外にも持っている。
俺は、小説。言葉で伝えること。
ルカは、料理を作ること。食を通じて、人とつながること。
まぁ、二人とも、言葉とか食とか、そういう根源みたいなところでしか他者と繋がれないような不器用さがあって、そこが俺たちは似ているのかもしれない。
そういうルカとのつながりを、保っていたいし、死ぬまで忘れたくない。
そういう思いに駆られた、ひと夏の思い出だった。
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