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困った後輩ちゃん
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重い…
朝、目が覚めると体の上に重みを感じる。顔までかけた掛け布団を取ると、いつもの顔が笑顔で俺の体の上に乗っかっている。
「おはようございます、けんちゃん」
「……重い」
上に乗っかってんのは幼なじみで後輩の穂ノ香龍介。昨日閉め忘れたベランダの窓から入ったらしい。窓から朝の冷たい風が入ってきている。俺の理想的生活を崩す最大の原因。
「えへへ、またまた大きくなりました」
「そ、どいて」
アラームのようにその顔にデコピンを入れると
言われた通り俺の上を下りる。龍介はそのまま部屋のカーテンを開けた。太陽の光が部屋にたくさん入る。眩し、目を細めながら体を起こし、少し伸びをした。
「おめでとうございます!けんちゃん♪」
「え?」
「え?!けんちゃん今日誕生日、忘れてたんですか?」
「たんじょー…あ、ホントだ」
カレンダーを見ると、確かに俺の誕生日だった。記念日とか興味無いし……。いつも俺の誕生日は俺本人より周りの方が嬉しそうに祝ってくれるのが毎年だった。龍介なんていい例だよ
「もー、無頓智すぎです!」
「そーかなー」
いつもの調子で答えると龍介は呆れて「もー」といった。軽く笑って返すと龍介は少し言いづらそうにモジモジとしている。
「……それより俺1番ですよね?」
キラキラとした目で上目遣いをして聞いてくる。心なしか耳とはち切れるほど振ったしっぽが見える。犬だ…
「1番?」
「けんちゃんの誕生日、一番に祝ったの…」
あー、なんだそんなことか。目の前の人懐っこい犬を撫でて少し屈んで目線を合わせる。
「毎年龍介が1番だよ、ありがと」
「ッ、えへへ、ありがとうございます♪」
去年もその前もその前もずっと龍介が1番に俺の誕生日教えてくれて祝ってくれる。毎日俺の上に乗って起こすのはどうかと思うが、、、
ふと、机の上を見るとペン立ての中に入れてあったペンが全部机の上に出ていた。ペン立ての中にはペンの代わりにぐるぐる巻きになった紙が入っていた。地味に嫌なイタズラ……
「龍介?これ、どーしたの?」
「新しいイタズラです♪」
「やめなさい」
「あひへへへ、いはいへふ!」
龍介のほっぺをつまんで伸ばした。大袈裟に痛がって居る。そんなに強くつねってないよ、もー
パッと離す、龍介はつねられたところをさすった。
ペン立ての紙を取り出して広げてみると、〔クローゼット見て〕って書いてあった。
「龍介、これなに?」
「聞いちゃったら意味無くないですか?」
「いいから」
こういう場合だいたいクローゼットを開けるとどこで買ってくるんだかわかんないけどマネキンが置いてあるか、クローゼット開けた瞬間竹刀が降ってくるかの二択。前者はまだいい、多少邪魔なだけだし。後者をやられた場合最悪だ。初めてやられた時は一日中額が痛かった。痛いのはゴメンだ。なので龍介に何をしかけたのか問いつめる。
「えー…なんもないですって」
ガチャ
龍介がクローゼットを開けても何も降ってこないし落ちてこなかった。マネキンパターンか
安心してクローゼットの前に立つとびっくり箱のようにビョーンとピエロの顔が飛び出してきた。
「ッ!」
「すごいでしょ!手動!」
「……」
「遠隔操作なんです、すごく使い勝手が良くて7メートル離れててもしっかり作動するんですよ!」
「龍介」
龍介の後ろに回って頭を掴んだ。龍介は肩を上げて、ゆっくり振り向いてこちらの様子を伺ってくる。
「龍介今年受験生!
こんなことに時間使ってないで勉強!」
「だって」
「だってじゃないの!」
「……はい」
さっきまでブンブンと振ってたしっぽとピンと立てていた耳がしゅんとしたように見える。けど言う。言わなきゃいけないことだし
「あと、窓開いてるからって入ってきちゃダメ
龍介の部屋の窓から俺ん家のベランダまで幅あるんだから落ちたらどーするの?」
「でも!…小さい時は1人で渡れなくて、渡れるようになったから……小さい時は怒らなかったのに…」
はぁ、困ったな…
「もう中3でしょ?少しはシャキッ、と……」
よくよく考えてみたら俺シャキッとしてないな……自分ができてないことを他人に要求するのは…あれか
「まぁ程々でいいんじゃない?
毎日俺に構うより有効な時間の使い方すれば」
俺の言葉がショックだったのか龍介の目には涙が浮かぶ、口をパクパクさせるが手を握りしめうつむいてしまった。
今のは少し言いすぎたかな……でも実際そうだし……
いやでも…なんか可哀想になってきた
「ご、ごめん言い方キツかった」
「……けんちゃんは俺に構われるの好きじゃないんですか?」
「え、…ま、まぁ
俺の目標達成には向かないかな……って感じ?」
「目標とか置いといて!」
珍しく真剣な顔で問いつめてくる龍介にしどろもどろしながら答える。
「うーん……日常茶飯事だし、好きとか嫌いとか考えた事ないかな」
「分かりました!じゃあ1週間イタズラするの辞めます!」
少しキレ気味に言い放ち、ベランダから龍介は自分の家に戻って行った。龍介が居なくなった俺の部屋に沈黙が流れる。1週間イタズラ無し、か…
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