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「遅かったね。なに、どうしてたの?」
学校に着いたのは2時限だった。いや、決して胃痛に襲われて来るのが遅れた訳ではない。勢いに任せて教室に入った途端、廊下とはまた違った空気を感じた気がするのは、自分だけでは無い筈。
チャイムが鳴って直ぐに彼が現れたと思ったらこれだ。腕組みをして黒いオーラを醸し出しているその様子はまさに般若。
せっかくの美人なイケメンが台無しではないか。
「えぇー…ほら、妊婦さんがさぁ…うん」
「ふーん、妊婦さんが。…で?だからなんなの?」
「うぅ…寝坊しました!」
冷ややかな目を自分に向ける鬼のような彼に、嘘が通じる訳は無く。目を泳がす自分の嘘など押し通せる筈が無いのだ。
吊り上がった切れ長の目が呆れたように晴人から目を反らし、溜め息を吐く。
(呆れられたかもしれない)
滝沢 貴文(タキザワ タカフミ)今呆れている彼は、言わば恋人である。ちゃらんぽらんな自分とは正反対に真面目で、クラスの委員長だったりもする。
身長178センチ成績優秀で眉目秀麗、当然の事ながらモテモテで。艶やかな黒髪に切れ長の目、ノンフレームの瞳から覗く一見冷たそうな視線がクールで格好いいと言う言葉は良く耳にする。
それに比べて自分は…と卑下するつもりは無いが、見劣りしてしまうのだ。髪はハニーブラウン前髪長めにウルフカット、目は奥ぶたえで大きい訳でも無いが、笑うとねこ目になってしまうのがコンプレックス。
身長は173センチと微妙で着痩せするはずないただのモヤシに近い筋肉の無い身体。
委員長が自分を選んだ事自体、奇跡に近い。
落ち込んだ素振りは見せたつもりはないが、自分を今動物に例えるなら尻尾の垂れた犬に違いない。
「…寝坊するのは仕方無い事だけど、どうして連絡しないの。僕が心配しないと思った?携帯どうせ見てないでしょ。」
反らされた視線が再び自分を見据える。
「うぇ、携帯?…見てない」
発せられた言葉に一安心とばかりに安堵すれば、存在事態を忘れていた携帯を思い出す。時間に驚き、用意も中途半端なまま慌てめいていた朝の自分に酷く後悔した。
二人の大切な約束を忘れていたのだ。
携帯を開けば、質素ながも「大丈夫?」と書かれた文章。…やってしまった。
「ごめん…急いでて、慌てて、頭の中パニックになってた。」
二人の約束その1、遅刻はなるべくしないこと。遅刻をしたら連絡を入れる。
二人で交わした約束、破ってはいけない大切な契りを意図も簡単に壊してしまった。飽きられても仕方無い、自分で自分を貶すほどに。
遅刻しがちで出席日数の危やうい自分の為だけに交わされた約束、遅刻して万が一何かあった時の為にと連絡網。
彼の優しさが見に染みて分かった。
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