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「晴人、帰るよ」
素っ気なく呼ばれた自分の名前に、ハッと我に帰る。最近の出来事に関してどうやら考え込んでいたらしい、恋人に会えないと言うのはどうやら相当堪えるらしく、晴人自身例外ではない。
先に教室を出、歩き出して居るであろう恋人に、慌てて鞄に荷物を詰め込めば置いて行かれないようにと、教室を飛び出した。
教室を出て直ぐの廊下で、此方を向きつつ腰に片手を当て待っている彼に「あぁ、敵わない」と 、へにゃりと自分の表情が緩む。
自分を置いてなど行かない彼の分かりにくいようで分かりやすい優しさが、晴人は大好きで仕方ないのだ。
「今日さぁ、ほら、最近できたばっかの喫茶店に行きたい」
「どうせパフェか何か食べたいだけでしょ」
「うっ。バレたぁ?」
鋭い突っ込みが晴人の図星を突く。
最近出来た喫茶店には、好物であるイチゴパフェがあるのだ。その店を知ったのはついこの間の事、いつか行ってみたいと密かに願望をもっており、珈琲が好きな彼ならきっと一緒に行ってくれるだろうと晴人は思っていた。
「別に良いけどね、そこの珈琲は美味しいの?」
予想通りの返答に頬を緩める。
尽かさず投げ掛けられた質問に、店のメニューを思い出そうとするが思い出せない。下調べはバッチリしてきた筈なのに忘れたなぁと、物覚えの悪い自分に少し後悔した。
「んーと、色んな種類が有るらしいよ?」
「ふっ、なにそれ。晴人珈琲分かってないでしょ」
「だってさぁ、難しい言葉ばっかだし。其だけ種類多いって事じゃない?」
馬鹿丸出しとはこの事か、全く覚えてない晴人に対して貴文は何処か可愛らしく感じてしまうのも仕方の無いこと。
他愛のない会話を暫く続け、晴人の言う喫茶店に着いたのはつい先程の事だ。
見た目は落ち着いた隠れ家のような外装をしており、人通りの少ない裏路地付近の為か、それが返って余計にそう言う印象に感じさせた。
五月蝿い場所を好まない貴文にとっては、気に入らない訳がなかった。
「晴人にしては趣味が良いんじゃない?」
「ホント?やったねぇー」
褒めているのか貶して居るのか分からない貴文の言葉に、素直に喜ぶ様は何とも馬鹿であろうか。いや、ポジティブと言った方が良いのかもしれない。
喫茶店「こもれび」と書かれた看板の前で立ち尽くす二人は、その足を進めて中に入ったのであった。
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