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店内はさほど広くはないが席と席の間にゆとりが有るためか、広々とした印象を与える。
「いらっしゃいませ」と喫茶店ならではの落ちついた声で店員が二人を迎え、迎えられるまま窓側の席に座ろうとする貴文は、そわそわと落ち着かない恋人に目を向けた。
輝いているのだ、主に目が。
「…早く座ったら?じゃないとイチゴパフェ食べれないよ」
「分かってるー。早く食べたいなぁ」
分かっては居たが、彼は大の甘党なのだ。彼曰く、甘いものは男の食べるものじゃないとかなんとか言いながら、普段は全く食べないくせして、自分の前だけは遠慮無く頂く。
それは晴人が貴文にだけ特別だからと言う証らしいのだ…全く可愛いではないか。
メニュー表を見るまでも無く、店員を呼び注文する。
珈琲だけ飲めれば満足な貴文はオススメを頼み、晴人は予定通りのイチゴパフェを頼んだ。
美味しそうに頂くのは良いが、甘党ではない貴文にとってイチゴパフェは胸焼け対象なのだか、可愛い恋人を見る良い機会だと
思えば、幸せの何物でもない。
「ご注文の品です。お揃いでしょうか?」
店員の言葉と共に置かれる珈琲とイチゴパフェとセットの紅茶。二人は軽く礼を入れて、手に取る。
その際晴人は小さく「うわぁー」と歓声をあげ、綺麗に飾られた沢山のイチゴを見るなりその瞳をこれでもかと言うほどに輝かせる。
「待ってましたぁー!疲れたあとは甘いものにかぎるよねぇー」
「何も疲れてないでしょ、授業寝てばっかりだったクセに」
今まさにイチゴパフェを放り込まんとする晴人の頭を、容赦なく小突く。
しかしながらそうされて当然の事、貴文の席は晴人より後ろであるが為、今日と言う1日全ての授業を睡眠学習にして過ごしていた事などバレバレなのだ。
「いたぁー…暴力男め」
「何か言った?この口で」
頬をつまみ上げグリグリとした挙げ句に引っ張る。全く容赦ないのだ、この男は。
「いたたぁー…ヒドい」
「五月蝿い。誰が悪いの?ほら、言って見せてその口で」
「うぅー。委員長のいじわる」
頬を擦り大袈裟に痛がり泣き真似をする晴人。だが、此処で赦してくれるような恋人では無い。
「意地悪?誰が。それに…委員長なんて聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど?」
「えっ、えーっと…たかふみ。ごめんなさい」
ノンフレームの眼鏡から覗く鋭い目。
まるでそれは、弱った獲物を前にして今から喰らおうと狙う狼のように、晴人を捉える。
こうなってしまえば、弱ったウサギである
彼では到底敵わないのだ。
それでもウサギは、負けることを恐れず立ち向かう。
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