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第2話 狼、ウサギに嫉妬する
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「釈然としない」
某有名なコンビニに滝澤 貴文(タキザワ タカフミ)はいた。ノンフレームの眼鏡を押し上げ、端整なるその容姿を崩して不機嫌なオーラを醸し出している。
その視線の先に自分の恋人である彼青井 晴人(アオイ ハルヒト)は知ってか知らずにか愛想の良い笑顔を、自分では無く他人に振り撒いているのだ。
お客ならまだ仕方は無いが、同僚である店員にもである。
クラスの委員長でもある彼は遅くなった帰宅途中、恋人の顔を見に委員会が終わり次第急ぎ足で此処に来たのだ。
街中にある某コンビニは、当然の事ながら利用客も多く、此方を見る素振りも無い、彼は忙しくレジを打っている。
自分を見て欲しいなど、勤務中である彼に我が儘の如く思うのは、全く理にかなっていないのだが、それもまた恋人の特権では無いだろうか。
胸にモヤモヤを残したまま帰るのは全くもって釈然としないのだ。
「いらっしゃいま…っ!?」
今初めて気付きました、そんな顔をする晴人に一段と眉間に皺が寄る。
特に買いたい物があって来たわけではない貴文は、珈琲を片手に目的である晴人のレジ前に並んでいた。
貴文を見てか驚いた様子で何処か落ち着きないままその時が来る。
「…気付いて無かったでしょ」
「あー…えーと、うん。」
小声で責めるようにいって見せれば、嘘も無く素直に返事をする晴人。
目を合わせようとしないその素振りに、モヤモヤは爆発寸前だ。
なんて些細な嫉妬だろうと思うが、自分にとってはとても大事な事なのだ。
レジが終われば、それ以降の会話は無くそのまま店を出ていく。
出ていった彼の表情など知りもせず。
青井 晴人。
彼は知らないかも知れないが、学校ではかなりの有名人なのだ。
ちゃらいとかチャラ男とか女好きなど余り宜しくないような数々の噂を耳にするが、最後は可愛いと締めくくる。
通う学校は男子校である為か、そう言った輩も出てくる訳で…自分とて例外ではない
。要するに、晴人はモテるのだ。
ノリが良い為か友達の輪も広く、気付いてないようだが、明るいパーマ掛かった髪に端整な容姿は遠くに居ても目に付きやすく、実際に告白されている様子を何度も目撃している。
この苛立ちは、今回の事だけでは無い、日々積み重なった苛立ちとも言えよう。
しかし、自分はこのまま黙っているような男ではないのだ。
どうやってお仕置きしてやろうかと、黒い笑みを浮かべて帰路を歩いた。
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