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次の日、まるで豪雨にでも打たれたかのように暗い赴きで登校する晴人。
一度寝れば「永眠出来るのでは無いだろうか」と言う程、爆睡出来る彼の目の下は心なしか黒い。
何時もなら遅刻ギリギリで教室に入るのだが、始業時間に充分間に合う程早く席についている。
原因は明らかだった。
「おはよーっす!ちょ、はるちゃん早くねー!?」
「………」
友達の挨拶を軽くスルーし、机に向かって項垂れる晴人。
後ろにはその原因である彼がそっぽ向いて不機嫌オーラを醸し出しているのだ、もう泣くしかない。
「え、無視なの!?イジメ!?」
「………」
「はるちゃーん、晴人ぉ!!」
「…うるさーい!オレは今いそがしーの!」
項垂れたまましつこく構ってくる友達を罵倒すれば、思い返すのは昨日の事。
確かに気付かなかった自分が悪いのだ、大好きな彼がわざわざ最寄りでもない自分の勤め先に来てくれていた。
自分がその立場だったなら、きっと怒っていただろう。
だか、メールも電話も無視なんて酷いじゃないか。チャンスさえ与えてくれれば幾らでも謝るのに…もう頭の中はそれで一杯だった。
ーーキーンコーンカーンコーン
結局一言も交わさないまま、本日最後のチャイムが鳴る。
立ち上がり礼をした後、彼が帰ってしまわないように勢いに任せて向かいその手を掴んだ。
「…まって!昨日の事は謝るから…だからっ」
「昨日の事って…なんの事?」
掴む手を振り払う貴文に、チクりと痛む胸。
謝る方法など考えている訳もなく、1日あった時間はぐるぐると同じ事をただ無限ループしていただけなのだ。
冷ややかな目で自分を見る貴文に、心が折れてしまいそうだった。
「…っ、昨日オレが貴文を気付かなかったこと」
「ふーん。で、どうやって謝ってくれるわけ?」
痛いところを当然のように突く貴文に、怯み困惑する。自分に今出来る事など考えも付かない…しかし、此処で折れてしまったら二人の関係も終わってしまう。
大好きな彼と別れたくない、その想いが胸一杯に広がり、まさに今人生の窮地に追い込まれた晴人は、意を決してその口を開いた。
「どうしたら良いのか分からないけど…何でも言うこと聞くからっ」
「へぇ、何でも?…良いよ、だったらお仕置きだね」
「…っ!」
またお仕置きか、そんな事が頭をよぎる。
最近の自分はこればっかりだと思うのは気のせいではないはず。
しかし、今の自分は捨てられたウサギ…承諾しない訳がない。
軽く頷き、反応をみた貴文は笑みを溢した。
「…交渉成立だね。この後委員会が有るから、終わり次第晴人の家に向かうよ。まぁ、大人しく待ってて」
そう言い残し、貴文は書類を片手に教室を出ていく。
「…また貴文のペースに嵌まっちゃったぁ」
放課後になり、帰り支度も終わり誰もいない教室で呟く独り言がやけに響いた。
何だかんだで高校生活も2年目の晴人は、実家から飛び出し独り暮らしをしていた。
築なん十年のボロアパートだが、其なりに満足の行く生活をしている。
飛び出したと言っても、田舎に居る両親に僅かながらも生活費を送って貰っている訳だが、遊び盛りな晴人では足りる訳がなくコンビニでバイトしているのだ。
それが仇になるとはなんと言うことか。
散らばった服やゴミを片付けなければと急いで帰り支度をしたのだった。
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