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学校から電車で三駅、歩いてすぐの場所に晴人の住むアパートがあった。
委員会が終わり此方に来るのは大体二時間後位だろうと、目安を付けて片付けに取り組む。
「あちゃー…こんなに汚かったかったっけ?」
誰も居ない室内、自分が汚した部屋に幻滅する。食器はそのまま、脱いだ服は脱ぎっぱなしおまけに昨日食べたお菓子の袋が散らばっているのだ。
男の部屋とは言え、酷い有り様に今更ながらに溜め息を吐きだす。
綺麗好きである貴文がこの部屋を見れば、きっと発狂するであろう。
部屋に来るのは今日が初めてではないが、歯痒くもお互いに噛み合わない時間のせいで前に彼が来たのはいつ頃だったか。
思い出すようにせっせと身体を動かして片付けていく。
さほど広くない部屋はシンプルな物しか置いてないためか、すぐに片付く。
前に招いた友達曰く「もっとカラフルでごちゃごちゃしているのかと思った」なんて言われる始末である。
日頃から遊び惚けていた分、言われても仕方の無いことと言えば納得はいくのだが。
「もうそろそろ、かぁ」
時計を見、時刻は丁度帰宅から二時間経過していた。
お仕置きとは一体何をされるのだろう、今までの経緯を辿れば嫌な予感しかしないのは気のせいか。
ピーンポーン
「きた…」
運命の瞬間、ゴクンと唾を飲み込む。
このドアを開ければ恋人はどんな顔で立っているだろう。
恐る恐るドアノブを回して、覚悟を決める。
「こんばんは、いい子にしてた?」
貴文は満面の笑みで入り口に立っているのだ。これ程迄に怖いことは無いだろう、一度開けた戸を閉めたくなった。
「…いらっしゃい、いちおーいい子にしてたよ」
「そう、悪い子なのにね。…取り敢えずお邪魔するよ」
「…どうぞ」
何処かトゲのある言い方で返答される晴人。返す言葉は当然有るわけも無く、あからさまにもしょげた雰囲気を漂わせ靴を脱ぎ出す貴文を導くように部屋に案内する。
二人用のテーブルに座布団二枚。
ボロいアパートである小さな部屋ではそれを確保するだけでも至難の技なのだ。
「なにか飲む?」
「アイス珈琲を頂こうかな」
最早珈琲依存症と言って良いだろう、珈琲を好んで飲むのは知っている。
インスタンドだが、手際良く作り上げていく。何時もブラックだったな、等と好みまで知り尽くして居る自分は賢いではないか。
マドラーで混ぜ合わせ、ついでに自分の砂糖ミルク多めな珈琲を作っていく。
「…それ、可愛いね」
「え、どれ?あ、これ?」
不意に問い掛けられる。
指差すそれはきっとマドラーの事だろう。
硝子で作られたそれの持ち手の上には、ウサギが乗っており、晴人のお気に入りだった。
ウサギのマドラーを見せようと自分の飲む珈琲のグラスに入れたままにして、貴文が座っているテーブルに移動する。
珈琲を目の前に置けば、律儀にお辞儀する貴文。
「これさー、何処の雑貨屋さんかは忘れたけど気に入って買ったんだ」
「ふーん。色々なものに使えそうだよね、それ」
マドラーを混ぜる以外に何に使うんだと内心思う晴人。確かに色々な飲み物には使えるが。
何時もの彼なら口に出して言って居ただろうが、今はそんな場合ではなかった。
お仕置きと称して自分の家へとわざわざ来てくれた貴文。
許してくれないにしろ、其だけでも晴人にとっては有り難かった。
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